アンナ=楠杏奈編 第二部
昼休み。
朝であったあの女の子を探してみる。
(下級生って事は・・・1年ね)
廊下をぱたぱた走っていると、何人かが私の横を通って
「ほんとだー。噂どおり背、ちっちゃいねぇ〜」
と言ってきた。
どんな噂よ、と睨みつけたら、ビビって走ってどっか行っちゃったけど。
「ねぇ。そこの2人」
やっとの思いで、下級生を2人捕まえた。
それは、今日朝、あの女の子と一緒に登校していた子たちだった。
「は・・はい!なんでしょう・・杏奈様・・」
「様なんてつけなくていいわ。それより
黒髪で、背の高い・・たしか『麗』とかいう子、知ってるわよね?」
2人はびくっと体を震わせた。
「し・・ってます」
「その子のところに案内して頂戴」
「「あ・・あの」」
2人の声が重なった。
「「麗を苛めるんですか?それだったら・・案内は・・」」
「違うわ。苛めたりなんかしない。約束する!」
ほっとした笑顔で、2人は笑った。
「よかったぁ〜」「だねっ!」
1−3。此処にいるらしい。
「ここ?」
「はい!麗ー!れーいー!ちょっと来てよぉーっ」
2人が手招きして麗を呼ぶ。
「何?何か用?」
手には文庫本。読書家なのね。
「あのね!杏奈さ・・先輩が、麗に用があるんだって!」
麗は怪訝そうに私を睨んだ。
「何か御用ですか?苛めにいらしたとか?」
「違いますー。ええっと・・本名教えて下さらない?」
「・・・鮎川麗・・」
鮎川・・どこかで聞いた名だわ。
「ね。鮎川麗さん。私とお友達にならない?」
「ええええー!?麗すごぉぉーい!」
2人が歓声を上げる。通りかかった人たちも目を丸くする。
小声で「イジメじゃない?」との声が聞こえた。
「なんでですか?」
「え?」
「貴方ほどの有名人。友達らしい人なら沢山いるでしょ。
では、本の続きが気になってるんで・・・」
去ろうとする麗の腕を掴み、引き止めた。
「ね?なってくれる?」
「・・・・」
麗は私をうっとおしそうに見下ろす形で、目を細めた。
「じゃ、仮の友達って事で・・」
「ほんと?ありがとぉっ!」
あんな面白い子を友達に入れれたなんて!
これから、もっと楽しくなりそう・・・。