コウヤ=高野瑞貴編 第四部
微かな足音が、怖い。
「おーい!瑞貴!授業終わったぞ!くっそー。あのサボり魔、どこにいやがんだ・・」
大きな啓吾の声と、足音が、理科室の近くの廊下に響く。
「みーずーきーっ!!!」
俺の肩がびくんと震えた。
「いたいた!全く、探すこっちの身にもなれってんだ。
じゃ、かえろーぜ。みず・・・・」
啓吾の声が途中で止まる。息を呑む音が聞こえる。
「瑞貴・・・」
「啓吾・・?」
部屋の中は暗くて、中までは見えないだろうけれど、血なまぐささは健在してた。
「なにしてんだよ・・。そ、そういやねぇちゃんは?
岡田センセもいねーじゃん・・?」
啓吾の声はかすかに震えていた。
「啓吾・・・」
「なんだ・・よ?」
「俺、もう帰る」
「え。気分でもワリィのか?だったら保健室でも行ったほうが・・」
「帰る!!!」
俺は、大声で啓吾を怒鳴ってしまった。
「あ・・・わかったよ・センセには言っとく」
「・・・・・・」
俺は駆け出した。
いつまでもココに居たら、気が狂うんじゃないかとびくびくしてた。
後ろを向くと、まだ啓吾は心配そうにこっちを見ている。
「啓吾!」
啓吾の肩が震える。
「有難う!怒鳴って悪かった。さよなら!」
そこに残ったのは、唖然とした啓吾の表情だった。
「なんだ・・・?あいつ」
ふいと理科室のほうを向くと・・・
「ぎゃぁぁぁぁぁあああああ!!!」
もう、ココにはいられない。
逃げなきゃ。逃げなきゃ。
耳には、啓吾の叫び声。