コウヤ=高野瑞貴編 第三部
グロテスクシーンあります。
「おはよっ!」
「おっはよ!瑞貴」
今日は嫌な予感がした。
なぜだか嫌な予感がした。
しかも、災いが降りかかるのは、
俺じゃなくて、姉のような気がした。
「高野くん。宿題してきた?」
「へい。してきやした」
いつもみたいにふざけて、皆が笑って、先生が苦笑して、
それが一番いいと思っていた。
なのに、神様は、俺からそれを奪い取って言った。
「お前に楽園などひつようない」
昼休み。ぼけっと考え込んでいる俺のところに、啓吾がやってきた。
「瑞貴ー。お前のねぇちゃんって、けっこう優等生だよな」
「しらねー」
「前の中間は?」
「3位」
「じゃ、すげーんだ。あのな、お前のねぇちゃん、岡田センセと
理科室にいたんだけど。怒られてんのかな・・・・?」
俺は眉をひそめた。
「ねーちゃんがどこにいようが関係ねーよ。なんだよお前、
シスコンって言いてぇのか?」
「ちげーよ!お前、今日変だぞ!カリカリしててさー」
そうだ。何かがおかしい。狂ってる?
悪いのは俺じゃない。じゃぁ誰だ?
そうか、姉が、ねぇちゃんが・・・・・・・・・・・・
ねぇちゃんが・・・・危ない・・・?
俺の直感は嫌というほどあたる。
授業を知らせるチャイムがなったとたん
それを引き金のようにして、走り出した。
「お・・おい!授業始まるぞ!?」
「ねぇちゃん!」
勢いよく理科室の戸をあけた。
昼間なのに、黒いカーテンを閉め切っていて、中は何も見えない。
「ねぇちゃん!」
「瑞・・・貴・・・?」
闇の中から、白くて細い腕が伸びてきた。
手首には、赤と白のミサンガをしていた。間違いなく姉の腕だ。
その腕が、俺を抱きしめる。
「ねぇちゃ・・・・」
そのとたん、液体が俺の頭に落ちてきた。
生臭くて、生ぬるくて、どろどろした、赤い液体。
「ねぇちゃん!血が・・・・・!?」
そう言い放って前をむくと
姉は、死んでいた。
ぐちゃぐちゃに割れた頭を、俺の肩にのせて、
白い腕は赤く染まって、俺の腰に結びついたままだった。
「あ・・ああ・・うぁ・・っ!」
「高野くん?どうしてこんなトコロに居るのかしら?」
「せんせ・・・・」
俺の目線の先には、口元が大きくつり上がっている
鬼のような先生がいた。
「せんせ・・が、ねぇちゃん・・を・・・・?」
「そうよ」
「ど・・・・・して・・・?」
「ムカつくの。その子。ちょっと頭いいからって。
世間ではでしゃばりって言うかな。とにかく、私にとって邪魔だった。だから消した。
殺した。ハイ、なにか文句でもあるの?生徒が先生にたてつくの?
あんたも消すわよ」
呆然としている心の中に、赤くて黒いものがこみ上げてきた。
憎い。あんなに好きだった姉を殺したこの女が憎い。
ーーーーーーーーーーっ!!
俺の目の前にあるのは、汚い血の海。
2つの死体。
そうだ、俺は、人殺しをした。
でも、俺は悪くない。
なにもかも、この女が悪いんだ。
「あ・・あ・・・あぁぁぁあああ!!うわぁぁあああ!」
どうして、神様はこうも残酷なのだろう。