ミーウェイ=木村未兎編 第八部
あたしは、カフェで、住み込みのバイトをはじめた。
バイトって言っても、給料は無いし、来るのは怪しい人ばっかり。
だからあたしは(中一ってコトもあって)厨房のほうに居た。
瑞貴は中一なのに高校生くらいに見えるから、接客をしていた。
で、瑞貴の友達って言うのが、高校3年生らしい。
元やくざだったか暴走族だった、っていう話を聞いたような聞かなかったような。
「未兎ー。休んでいいぞー」
「へーい」
あたしは和室に転がり込むと、窓際に居た瑞貴に声をかけた。
「瑞貴も犯罪者なんだよね。誰殺したの」
瑞貴は目を丸くしてあたしを見た。そしてまた窓を向き、曖昧に答えた。
「・・センコーみたいなやつ」
瑞貴は悲しそうな目で、外を見た。
「いい先生だった。皆に好かれてた。俺も気に入ってた。
でも、裏切ったんだ。裏切られた。悲しかった」
あたしは言葉をかけれずに、静かに聞いてた。
「人って汚いよな。醜い。金で全部動くし。
俺みたいに殺しが楽しいって思う奴らもいる。
でも、仕方ないんだろうな」
あたしは動揺しなかった。
そう、人は汚いし醜い。
今更分かりきったこと。
「友達は、俺が殺人してるって知らないから、黙っててくれ」
弱いなぁ。
「分かったよ。別に言う気も起きないしね」
あたしは、コートをかぶって外に出た。寒かった。
あたしのかぶってたコートは、由香里を殺した日に着てたコートだから
血の臭いがぐわんぐわんするけど、気にしなかった。
あの時由香里を殺さなかったら
きっと、あたしは由香里に殺されてた。
狂って、狂って、踊りながら倒れていくような
そんな死に方はしたくない。
なにがあっても生きなきゃ。
近くの電気屋さんに目をやると、ニュースを報道していた。
それは、昨日の夜、世田谷で15・6の女の子が
釘で刺されたというニュースだった。
つまり、あたしが起こした事件。
ついでにもう一つ報道していたのが
13歳の女の子の死体が、高級住宅外の路地で発見されたとのコト。
女の子の名前は・・・・・・佐藤由香里。
背中に寒気が襲ってきた。
血の臭いが、自分の惨めさが戻ってくる。
なにを怖がっているんだ。
恐れることは何も無い。
「行方不明の少女は、指名手配中です」
最後の一言を聞いたときはビクンとした。
よく見れば、周りを通っている人皆が、自分を避けている。
こんなところに居てはいけない!
早く部屋に戻らなきゃ・・・。
「あなた、ヒト、殺したでしょ」
いきなり自分の視界に、人が入ってきた。
「瑞貴ー。お客さんだよー」
アメとあったのも、アンナとあったのもこの日。
この日は、あたしの、運命の日。