ミーウェイ=木村未兎編 第六部
「あ・・・・ああああああ!!!」
由香里の死体はピクリとも動かない。
「いやああああぁぁぁ!!」
あたしはその場から走り出した。
由香里の家から逆方向に。
街中に入ると、自分自身が揉み消されてしまいそうな
人だかりがあった。
あたしは、幻覚に陥った。
人が皆、由香里に見えてくる。
頭や腹からどろどろと血を垂れ流して
包丁をもって、あたしをにやけた目で見てくる。
「あ・・・・ああ・・っ・・あっ・・うぅぅっ・・」
「ちょっと!未兎じゃん!ナニしてんのぉ?大丈夫ぅ?」
顔を上げると、サークルの仲間達があたしを見下ろしていた。
「みんな・・・・紗枝チャン・・・」
「未兎、あんた裸足じゃん?どしたのよ。あんな路地から出てくるしさぁ」
すると、一人の子が声を上げた。
「なんか・・・血臭くね?」
そしたら、皆があたしのほうに寄ってきた。
「わ!ほんとだぁ。血っぽい臭いする〜」
「未兎ぅ。あんた殺人でもしたァ?シャレになんねーよぉ?」
きゃははは!それはないでしょーという声があちこちから上がる。
あたしは無性にその辺に落ちていた釘を拾った。
グサッ!
その辺に居たやつの肩にその釘をねじ込んだ。
「いやああああああ!!未兎っ・・なにしてんの・・・っ」
「人殺し!きゃああああぁぁ!!」
そこら辺に皆の声が響く。
泣き叫ぶ声。狂ったように叫ぶ声。呆然とあたしを見つめる目。うめき声。
あたしはがむしゃらに走った。
走って走って走って走り続けた。
ドン。
誰かにぶつかった。
「ってー!誰だよ!ちゃんと前向いて歩け!」
「なによ!あんただってぶつかってきたくせに!偉そうな口利くな!」
あたしは顔をあげてそいつを睨みつけた。
栗色のハリ頭に、白のパーカー、ジーパン。
こいつは、のちのコウヤ。
「うるせー女だな!おめーがわりーに決まってんだろ!」
「なんであたしなのよ!どっちもどっちで走ってたからお相子でしょ!?」
コウヤはクスクス笑った。
「な・・・なによぉ!」
「べっつに〜。面白い奴だな、お前」
「そんなこと無いもん!」
「俺、高野瑞貴。お前は?」
あたしはむくれ顔で言った。
「あたしは・・・木村未兎」
「ふぅん。変な名前」
「変じゃないもん!!」
いきなり、瑞貴があたしの手を引っ張って、ずんずん歩き出した。
「ちょ・・!どこ行くの!?」
瑞貴はあたしをじろじろ見て言葉をはいた。
「きったねー服!顔とか血ばっか!おめーそれじゃ目立つぞ。
だから服とか貸してやるからこい」
あたしは、ちょっとびびった。
「なによ。あたしは犯罪者よ?しかも初対面のあたしに
服貸すだなんて・・・あたしを使って何がしたいの?」
瑞貴は苦笑した。
「なんでかって・・!?」
「俺も、お前と同じで犯罪者だし」