表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王城のメイド  作者: 中路太郎
接近遭遇編
19/53

第十八話 ようやく話は冒頭へ戻る……ようやく

 人気のなくなった中庭――アーケードを支える柱の一つ。

 ちょうど城内への出入口を眺める位置にある柱の陰で、更に深い影が夕闇に紛れて蠢いた。

 夜に近い世界に、人の形をとって一歩進み出る。

「やだ、本当に人間に頼る気なのね」

 弦月のように細められた口元が開いた。

 金色の瞳を二人の消えた出入口に向けながら、返答を期待しない独り言のようにつぶやく。

 闇を佩いて現れたのは、炎のように赤い髪をした長身細身の男だった。

 軽薄そうな表情の半分を隠す長く伸ばされた前髪をかき上げると、尖った左耳にされた髑髏のピアスが顕になる。

「ちょっと、彼ら本気みたいよ?」

 妙な裏声で喋る男に、左耳にされたピアスが反応した。

 カッと目の部分が光ったかと思うと、下顎がカタカタと音を立て始める。

『聞こえてる……感度はどうだ?』

 ピアスから低い声が発せられた。

 その声に突然身悶え始める男。

「えっ、あっ、やだ、もう! 何考えてんの? だめよ、いくら陽が落ちたからってそんな質問……」

『馬鹿、ピアスの事だ馬鹿。とんだ馬鹿。オカマ、馬鹿』

「ちょっと、オカマ挟んで馬鹿っていうのやめて! それに、あたしは性を超越した魔族なの。そんな通り一遍な呼び方やめてくれない?」

『わかった。……オカ魔族』

「えっ、何その最低のハイブリット。……ったく、感度は良いわよ」

『当然だな』

 自信満々の声に、はいはいと返事をしながら、男は髑髏型のピアスを指で弄んだ。

「でも確かに凄いわね、これ。距離や障害物に関係なく離れた相手と会話ができるんでしょ。ノイズも入らず音もとってもクリアだし」

『当たり前だ。誰が作ったと思ってる』

「……くっ、本当に自信過剰なんだから」

 半ば呆れつつ返答すると、急に男は頬を染めながら、お腹の前で手を組んでモジモジと体を左右し始めた。

「ま、まあ? そ、そういう自信たっぷりな所も、す…す、き、だったり?」

『ガー……ザザー……ガガー』

「――あれ? 混線?」

 突然、不自然に調子が悪くなるピアス。

『すまん。急に電波が入らなくなった』

 電波?

「もう! 折角人が愛の告白かましたっていうのに」

『はは、ちょっと何言ってっか分かんないです』

「わかるでしょ、てかなんで敬語なのよ! ……はあ、もうイイわ。で、どうするのよこれから」

 がっくり来ながらも、話をもとに戻す。

『しばらくは直接手出し無用だ』

「ほっとくって事?」

『いや、ただの人間がノコノコ魔王城にいくとは思えん。何か訳があるはずだ。お前はそれを探れ』

「あの娘を調べるのね」

『徹底的にな』

「りょ~かい」

 肩を落としていた男が顔を上げる。

「は~、ごめんね~。これも真実の愛のためなの。覚悟しといてね、子猫スイートちゃん」

 明かりの灯りはじめた魔王城を見上げ、パチリと小さくウインクした。


「……っ」

 ゾクリと悪寒を感じてアイルネは振り返った。

「どうした?」

 隣を歩いていたカイルが怪訝そうに聞いてくる。

「あ、いえ、今とてつもない呼ばれ方をされた気がして……」

 やけに具体的な悪寒だった。

「大丈夫か?」

「ええ。多分、気のせいですから……」

 そう言いつつ、振り返った背後に視線を残してしまう。

 通ってきた廊下に無数に灯された燭台は明るい。その分、余計に深い影があちこちに不安を落としていた。

「嬢ちゃん」

 呼ばれて顔を戻すと、カイルの顔があった。

 きょとんとするアイルネに、にっと笑顔を見せる。

「例え何があっても、嬢ちゃんは無事に人間の国に帰すから」

 言われた途端、ほっ、と、全身の緊張がほぐれた気がした。

 と同時に、体の中のどこかがツキンと痛む気がする。

 それを堪えて、アイルネは微笑んで返した。

「ありがとうございます……でも、嬢ちゃんはやめてくださいね」

 そう言って先を歩き始めると、頭を掻きながらカイルがついてくる。

「……あ、そうだ忘れてた」

 タタタっと小気味良い足音響かせて、カイルが目の前に回りこんできた。

 足を止め、何事かと首を傾げる。

「魔王城へようこそ、アイルネ」

 そのいたずらっ子のような笑みに、アイルネは「はい」と笑顔で返した。


 ――こうして、ようやく話は冒頭へと戻る。

いつも拙作を読んでいただいてありがとうございます。中路です。


奇特にも続きをお待ちいただいてくださった、心優しい皆様方、長く時間がかかってしまい、本当に申し訳ありませんでした(土下座)

お優しい皆様の事ですので、きっと許してくれることとは思いますが……(チラッ


次の十九話で一章が終ります。

全体を通して二章しかないので、物語的にはもう、すぐ終ります(笑)

出来れば最後までお付き合い下さると嬉しいです(チラッ

そして、もし良ければ感想などご意見いただけたら、とても喜ぶな~、と(チラッ(チラッ

……すみません、チラ見やめます。


それではこのへんで失礼します。

本当にいつもありがとうございます。

ではでは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ