第十一話 アイルネ、ちょっとだけ泣きたくなる
そうして出来上がったのがこの姿である。
全身鏡の前で変身した自分の姿を呆然と見つめていたアイルネに背後から近づき、
「素敵……食べちゃいたい……」
そう言って、ぞぞぞっと背筋が泡立つような目付きで白衣の女性は唇をなめた。
急に気温が下がったような寒気を感じて、思わずズサッと後ずさったアイルネを見て、クスクスと楽しそうに笑う。
口元に手を当てて無邪気そうに笑うその姿は、同性のアイルネが見ても酷く魅力的で、笑い声にまで人を誘う香りが付いているようだった。
「あ、ア、ありがとうございました!」
声を裏返しながら、発条仕掛けのように腰を折ると、アイルネは慌ててゲストルームを飛び出した。
内側から激しくノックをされているような胸を押さえて、ぜえぜえ言いながら後ろでに扉を閉める。
直ぐ様飛び出してきたばかりの部屋から、扉越しの黄色い声が聞こえて来た。
「「「可愛い~~~~~~!!!!」」」
……何でもいいのか。
紅潮した顔がその声を聞いてますます熱くなる。
ふと横を見ると、案内役の若い兵士がそこに立っていた。
何事が起こったのか理解出来ていない様子の表情で、アイルネの方を呆然と見つめている。
「あ…はは」
さすがに気まずくて、それを誤魔化すようにこりと微笑んだ。
実際は「に、kこ…り」くらいぎこちない笑顔だったが、彼は一瞬ビクリと身をすくませる。
みるみるうちに顔が赤くなり、そうして、屹立した姿そのままで後ろにぶっ倒れた。
ガシャーンと石床に鎧がぶつかる大きな音を聞きながら、ちょっとだけ泣きたくなるアイルネだった。
短めですけど…Part2
Part3が無いよう頑張ります。




