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魔王城のメイド  作者: 中路太郎
接近遭遇編
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第九話 少々冷静さを取り戻した

「つ、ついにホントに来たんですね! ああ、どうしましょう! だ、誰か! 急いで私の部屋から毛布を!」

 メイド来たるの報告を受けた教育係が一瞬で色をなくした。

 パニくったのである。

 くるまれていると不思議と心が落ち着く毛布を兵士に取りに走らせ、自分はうろうろとその場を徘徊し始める。

「落ち着け、落ち着きなさい…! 大した事ではありません、いつも通り、そう、平常運転です。は、は、初めて魔王陛下にお会いした時のことを思い出すのです……あの時に比べればこんな事何でもないではないですか。たかだか、に、人間の小娘一匹…そう、に、人間んんんんんんn」

 だいぶクライマックスな状態にあらせられる教育係だったが、こう見えて結構えらい人である。

 加えてその美貌が無残に崩れる姿(半笑いでヨダレを垂らして白目を剥いてる)に、新米のまだ事情に明るくない兵士達はただただあっけに取られ、古株の賢明な兵達は素知らぬ顔で見て見ぬふりを貫いた。

 魔王陛下に至っては、もはやこの状況に一ミリの興味も示していない。

 好奇心の向かう先は、初めて目にする人間、ただ一点である。

「まだかにゃーまだかにゃー」

 瞳の中に星を輝かせながら、玉座の上で落ち着きなく揺れている魔王の前に、急ぎ足でやってきた兵がひれ伏した。

「し、失礼いたします」

「いーよー。で? で?」

「はっ、おいでになられました」

「にゃ! キター!」

 魔王が飛び上がった。

 そんな、まだ毛布が! と口走る教育係を無視して、大喜びで謁見を許可する。

「入って入ってー」

「はい、失礼いたします」

 呼びかけに応じて、楚々とした声が返ってきた。

 あわあわと両手を振りながら、玉座の横、いつもの定位置へとおさまる教育係。

 そこには、親しみ易すぎる魔王陛下の態度を改める余裕すらない。

 コホンと咳払い一つで空気を変えようとするが、その後ゴホゴホと咽てしまう。

 ……扉が開いた。

 誰かが、ほう、と溜息をつく。

 そこに立っていたのは、麗しき美少女だった。

 少しだけ胸元の開いた淡い桜色のドレス。

 肩口からドレスを螺旋状に降りる一条のフリルが小さく風に揺れて、花びらが落ちるような可憐さがそこに見えた。

 中途半端に長かった髪は丁寧に梳られ、後ろで纏めてアップされていた。髪留めは銀。モチーフは鳥の翼。

 面にはうっすらと化粧が施されていて、社交界デビューを思わせる初々しくも立派な淑女がそこに立っている。

 ……ただ、

 あっけに取られる一同の中、くいっとモノクルを直しながら、

「……えーと、これが、メイド、なのですか?」

 少々冷静さを取り戻した感のある、教育係のもっともな疑問であった。


短めですけど。


予約掲載というのを初めてやってみました。

やった事がなかったのでやってみたんですが、本当はどういう時に使うのが正しいのかが全く分からない…。

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