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プロローグ

「東條先輩…」


彼女は、久しぶりに面と向かって会う僕に怯えるような仕草を見せながら挨拶にやってきた。

でも、僕には分かったんだ…



彼女は僕を本当は未だに、拒絶している事を。

顔色や呼び方からして直ぐに分かる。

僕は声をあえて掛けずに、少しだけ笑みを見せた。

すると彼女は、まだ挨拶回りがあるから一旦僕の前から立ち去った。

礼儀正しく、一礼をして。


今日は僕の家が開催した祖父の誕生日兼祝賀会が行われていた。

三年前に一度顔を出したきり僕は、顔を出さなかったけれど…


今日は僕の母校である月白学園の生徒会メンバーが集まると聞いて、急いでスケジュール調整を行った。

お陰で、ロケ地のローマでのシーン撮影は徹夜を要した。


ただ、今回はこのチャンスを逃せば暫くまた彼女と話すことは叶わないだろうから…



僕は彼女と三年前まで付き合っていた。

正確には、一緒に過ごせた日々は一年にも満たない。



初めて出逢ったのは、同じく三年前の今日だった。

三年が短いのか、長いのかは分からない。


けれど、僕は彼女を忘れる事がどうしてもできなかった。

例え、一方的に別れを切り出されてしまっても。




当時の僕は軽い大学生で、彼女は優等生の中学生。端から見たら犯罪ギリギリだ。


彼女はホール受け付けに、カタギではない明らかに普通の奴とは思えない長身の男と共にやってきた。

この祝賀会は、完全招待制だから東條と何かしら繋がりのある者と見て間違いなかった。

男が受付をしている間、彼女はというと…

場違いに来たと言った顔をし、あまり華やかな笑顔は向けていなかった。

多少の知り合いに会えば、差し障りのない挨拶をするだけだ。

そんな彼女を僕は、暇だからロビーから見ていた。

当然彼女は知らないし、見向きもしない。


ただ、一瞬彼女の周りの空気が和らいだ時があった。どうやら、仲の良い知り合いが到着したようだった。


「あれ?あれって…海音と由梨かよ。それに初めて見る奴が居る」



彼女は足早に三人の元に駆け寄り近づくと屈託のない、柔らかな表情を見せた。

先程までが嘘のようだった。

ロビーで僕は、女を抱き締めながら彼女を目では追っていた。すると、女は気に入らないのか僕の身体をきつく抱き締める。

やけに、香水の甘ったるい匂いが鼻につく。



「私を見て?誰をみてるのぉぉ?」

「お前には関係ないよ。さっきから望むことはしてやってるだろ?」



最低限の女が喜びそうな事は、僕はきっちりやっていたのにワガママな女だ。そろそろこの女も飽きたし、潮時かな?


そう、思った瞬間…

僕は本当の意味で、彼女の心からの微笑みを見てしまう。

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