そう言えば、「バカって言ったほうがバカ」って言葉、どんな悪口でも応用できるんじゃないですか?
「ルリア嬢! 今日も最っ高にみすぼらしいわね!」
私、伯爵令嬢ルリア・アリラント。
茶色の髪に同じく茶色の目というぱっとしない見た目の、よく言えば控えめ、悪く言えば地味な外見だ。
そして今、私に話しかけてきたのは公爵令嬢フィーナ。自分より身分の低い人間を言葉でいたぶるのが趣味な令嬢だ。
ただいま私は、そのターゲットにされているらしい。
「あなた、地味王国で一番の地味さを誇るお姫さまかしら? そんなんじゃ誰もあなたと話したがらないでしょうねぇ?」
「はぁ」
「それに学園での成績は40位台。はっきり言って身の程知らずの愚か者だわ」
40位台って結構平均なんだけど……。学園成績トップクラスのフィーナ様からしたらバカに見えるのだろうか。
「完璧な私から言わせれば、あなたは阿呆で無能で、存在自体が不愉快な負け犬のゴミクズなのよ」
まるで悪口のオンパレードだ。
そこで、私はふと思いつく。
「そう言えば、『バカって言ったほうがバカ』という言葉、どんな悪口にも応用できるんじゃないですか?」
「は?」
「つまりですよ……」
私は思いっきり息を吸う。
「みすぼらしいって言ったほうがみすぼらしいですし、地味って言ったほうが地味ですし、阿呆って言ったほうが阿呆ですし、無能って言ったほうが無能ですし、不愉快って言ったほうが不愉快ですし……」
「ちょっ、ちょっと待ちなさい!」
「なんですか? まだ途中ですけど」
「あなたみたいな伯爵令嬢が私に悪口を言って、許されるとお思いで!?」
はあ……呆れた。この人、本当に阿呆かもしれない。
「ここは学園のど真ん中ですよ? 周りの皆さんが証言してくださるでしょうし、どちらかと言うと先に突っかかってきたフィーナ様のほうが罪に問われるのではないですか?」
「なぁっ……!」
フィーナ様の顔がトマトのように真っ赤になる。
「覚えてなさい!」
そう言って、フィーナ様は逃げていった。
「……ひとまず、恋人に相談してみよう」
そうして私は、第二王子の元へ向かった。
◇◇◇
「――……ってことがありました」
「ふぅん。フィーナ嬢の噂は聞いてたけど、そこまで言われるとは……。よし、正式に彼女の生家へ抗議しよう。ルリアの言い返し方も少し問題にされるかもしれないけど、そのへんは僕が裏から手を回して、うまくもみ消しておくよ」
「ありがとうございます」
ひょんなことから出会った第二王子。今や恋人という仲になっている。
「フィーナ様は、悪口を言う相手を間違ったみたいね」
私に悪口を言うなんて、第二王子を敵に回す行為だ。
バカって言ったほうがバカと言うけど、フィーナ様の場合、私にみすぼらしいって言ったから本当にみすぼらしい目に遭いそうだな――……。




