一緒にお風呂?
リーナが来て二年が経った。
私は十歳になり、リーナは十二歳になっていた。
ある日のこと。
「ユーリ様! 一緒にお風呂入りましょう!」
リーナが、無邪気に言った。
——は?
「最近、お湯を沸かすのが大変で……。一緒に入れば、効率的じゃないですか?」
効率の問題じゃない!
「……いや、別々でいい」
「えー、なんでですか?」
なんでって——
それは——
「私とユーリ様、小さい頃は一緒に入ってたじゃないですか」
……確かに、リーナが来たばかりの頃は、一緒に入っていた。
その頃は、私も八歳。
リーナも十歳。
あの時も、私は断ろうとした。
——いくら子供同士でも、男女で一緒に入るのは問題じゃないか?
そう思った。
でもリーナは——
「ユーリ様、一緒にお風呂入りましょう! リーナ、背中流してあげます!」
——と、無邪気に押しかけてきた。
母親も「リーナと仲良くなれていいじゃない」と笑っていた。
結局、押し切られる形で一緒に入ることになった。
あの時の私は——
正直、困った。
前世の感覚では、十歳の女の子と八歳の男の子が一緒にお風呂なんて、ギリギリアウトだろう。
でも——リーナはまだ子供で、体つきも子供だった。
私も八歳の体で、何も反応しなかった。
だから、なんとかやり過ごせた。
でも、今は——
十歳と十二歳。
リーナは、少しずつ成長している。
体つきも、少し変わり始めている。
——無理だ。
「……男と女は、別々に入るものだ」
私は、苦し紛れに言った。
「えー、でも、ユーリ様まだ子供じゃないですか」
子供じゃない!
前世では三十歳の大人だ!
「それに、リーナだって子供ですよ?」
いや、君は——
少し、子供じゃなくなってきている。
それが問題なんだ。
「……とにかく、ダメだ」
「なんでですかー」
なんでって——
言えない。
「私の心は女だから、女同士でお風呂に入るのは抵抗がない」なんて。
いや、違う。
今の私は男だ。
男の体だ。
だから——
「男は、女の裸を見てはいけない」
私は、真顔で言った。
「たとえ家族でも、メイドでも。男は、女を守るために、一線を越えてはいけないんだ」
リーナが、目を丸くした。
「……ユーリ様、大人みたいなこと言いますね」
「当たり前だ。私はこの家の跡取りだからな」
適当な理由をつけて、その場を乗り切った。
でも——
心の中では、別のことを考えていた。
いつか、この体が成長したら——
もっと大変なことになるんじゃないか。
女の裸を見て、何も感じないでいられるのか?
この男の体で?
……考えたくない。
でも、確実に——その時は近づいている。
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