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駆けつける

 クラウスが怪我をした。


 魔物討伐任務中に、部下を庇って負傷したらしい。


 命に別状はないが——


 重傷だという。


 私は——


 走っていた。


 考えるより先に、体が動いていた。


 クラウスのところへ。


 今すぐ、彼のところへ。


 エリーゼのことは——


 頭から消えていた。


 体が彼女を求めていても——


 心が向かうのは、クラウスだった。


「クラウス!」


 医療棟に飛び込むと——


 ベッドに横たわるクラウスがいた。


 包帯だらけ。


 でも、意識はあった。


「……ユーリか」


 クラウスが、かすかに笑った。


「わざわざ来たのか」


「当たり前だ!」


 私は、彼のベッドに駆け寄った。


「お前が怪我したって聞いて——」


「大袈裟だな。この程度、すぐ治る」


「この程度って——」


 私は、彼の包帯を見た。


 全身、傷だらけだ。


「……馬鹿だ。お前は馬鹿だ」


「誰が馬鹿だ」


「部下を庇って怪我するなんて。お前が死んだらどうするんだ」


「死なないさ」


 クラウスが、笑った。


「俺が死んだら、お前が困るだろ」


「……ああ」


 私は、涙が出そうになった。


 クラウスがいなくなったら——


 私は、どうすればいいんだ。


 この気持ちを、どこにぶつければいいんだ。


「ユーリ、お前——泣いてるのか?」


「泣いてない!」


「嘘つけ。目が赤いぞ」


「……うるさい」


 私は、顔を背けた。


 でも——


 クラウスが、私の手を握った。


「ありがとな、ユーリ」


「……何が」


「心配してくれて」


 その手が——


 温かかった。


 生きている温もりだった。


 彼の手は大きくて、ゴツゴツしていて、でも——


 優しかった。


 私の手を、しっかりと握ってくれている。


 ——心臓が、うるさい。


 バクバクしてる。


 顔も熱い。


 たぶん、真っ赤になってる。


 男同士で手を握っているだけなのに、なんでこんなにドキドキするの。


 いや、わかってる。


 これが、恋なんだ。


「……死ぬなよ、クラウス」


 私は、彼の手を握り返した。


「絶対に、死ぬなよ」


「ああ、わかってる」


 クラウスが、微笑んだ。


 包帯だらけで、顔色も悪いのに——


 その笑顔は、やっぱりかっこよかった。


 ずるい。


 こんな時でもかっこいいなんて、ずるい。


「お前がいないと、困るからな」


 クラウスが、からかうように言った。


「俺の訓練相手、もうお前くらいしかいないし」


「……バカ」


 私は、目を逸らした。


 泣きそうになった。


 でも、泣かなかった。


 男の体だから——じゃなくて。


 彼の前で、弱いところを見せたくなかったから。


 その笑顔を見て——


 私は、確信した。


 私が好きなのは——


 この人だ。


 体がどれだけエリーゼやリーナに反応しても——


 心が向かうのは、この人だけだ。


 これが——


 私の答えだ。


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