エリーゼの告白
王立学院に戻った私は——
さらに複雑な状況に陥った。
ある日のこと。
エリーゼから、手紙が届いた。
『会いたい。話したいことがある』
何だろう。
私は、指定された場所に向かった。
そこには——
エリーゼが、待っていた。
いつもより、おしゃれをしている。
髪を綺麗に整えて、ドレスアップして。
「来てくれたのね、ユーリ」
エリーゼが、微笑んだ。
「急に呼び出してごめんなさい。でも、どうしても——」
エリーゼが、一歩、私に近づいた。
「伝えたいことがあるの」
「……何だ?」
エリーゼは、深呼吸した。
そして——
「ユーリ、私——あなたのことが、好き」
時間が、止まった。
「幼馴染として、ずっと一緒にいて——いつの間にか、あなたのことを好きになってた」
エリーゼの目が、真っ直ぐに私を見ている。
「だから——私と、付き合ってくれませんか?」
——告白された。
エリーゼに。
友達だと思っていた、エリーゼに。
心は——
何も感じていなかった。
……いや、違う。
何も感じていないわけじゃない。
エリーゼのことは、好きだ。
大切な友達として。
一緒にいて楽しい人として。
同じ境遇を分かち合える、かけがえのない存在として。
でも——
恋愛感情かと言われると、わからない。
私が好きなのは——
クラウスだ。
あの胸のドキドキ、心が溶けそうな感覚は、クラウスにしか感じない。
でも——
体は、反応していた。
エリーゼの——女性としての魅力に。
耳まで熱くなる。
心臓が速い。
体は、彼女を求めている。
——これだ。
これが、問題なんだ。
今の私が感じている「好き」は——
本当の「好き」なのか?
それとも、体の本能が言わせている「好き」なのか?
わからない。
区別がつかない。
前世では女だったから、男の恋愛感情がどういうものか、よくわからない。
女の時は——
体がドキドキする前に、心がときめいていた。
でも今は——
体が先に反応して、心は置いてけぼり。
これって、本当の恋なのか?
それとも、ただの——
性欲?
……最悪だ。
エリーゼは、こんなに真剣に告白してくれているのに。
私は、自分の感情すらわからない。
体の言うままに「好き」と答えていいのか?
それは——
エリーゼに対して、失礼じゃないか。
彼女は、心からの気持ちで告白してくれた。
なのに私が、体の本能で返事をするなんて。
それは——
「そういう男」のやることじゃないか。
前世で嫌っていた、「体で女を見る男」と同じじゃないか。
——ダメだ。
こんな中途半端な気持ちで、答えちゃダメだ。
「……ごめん、エリーゼ」
私は、目を逸らした。
「今は、答えられない」
「……そう」
エリーゼの声が、少し震えた。
「でも、いつか——答えを聞かせてくれる?」
「……ああ」
私は、そう言うしかなかった。
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