勘違い
そして——
最悪の勘違いが起きた。
ある日のこと。
エリーゼが、王立学院に来た。
没落貴族同士のよしみで、私に会いに来てくれたらしい。
学院に入ってからは初めてだ。
「ユーリ、久しぶり!」
エリーゼが、笑顔で手を振る。
その瞬間——
体が、反応した。
エリーゼは、また成長していた。
より女性らしく、より美しく。
そして——
私の体は、彼女を「女性」として認識した。
顔が、赤くなる。
心臓が、速くなる。
——くそ。
なんでこんな時に。
「ユーリ? 顔赤いけど、大丈夫?」
エリーゼが、心配そうに覗き込む。
その時——
「おい、ユーリ」
後ろから、クラウスの声が聞こえた。
振り向くと——
クラウスが、私とエリーゼを見ていた。
「彼女か?」
「違う! 幼馴染だ」
「でも、顔赤いぞ」
——最悪だ。
クラウスに見られた。
エリーゼに反応している私を。
「なるほどな」
クラウスが、にやりと笑った。
「お前、この子のことが好きなのか」
「違う!」
「嘘つけ。顔見ればわかる」
違う!
好きなのは、お前なんだ!
エリーゼに反応してるのは、体だけで——
心は、お前のことしか——
「いい趣味してるじゃないか。可愛い子だな」
クラウスが、エリーゼに向かって言った。
「俺はクラウス。ユーリの先輩だ」
「エリーゼです。ユーリの幼馴染の」
「なるほど。よろしく、エリーゼ嬢」
二人が、笑顔で挨拶を交わす。
私は——
地獄だった。
◇ ◇ ◇
その日から——
クラウスは、私の「恋」を応援し始めた。
「ユーリ、エリーゼ嬢に手紙は書いたか?」
「ユーリ、今度のパーティーでエリーゼ嬢をエスコートしろよ」
「ユーリ、お前って女の口説き方知ってるか?」
——違う。
違うんだ。
私が好きなのは、エリーゼじゃない。
お前なんだ。
でも——
言えない。
絶対に言えない。
男同士で恋をしているなんて。
しかも、心は女で、体は男で、好きな人は男で、でも体が反応するのは女で——
複雑すぎる。
誰にも理解されない。
私は——
この地獄を、一人で抱えながら生きていくしかなかった。
【作者からのお願い】
もし、「おもしろい」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマーク登録をしていただけるとうれしいです。また「いいね」や感想もお待ちしています!
また、☆で評価していただければ大変うれしいです。
皆様の応援を励みにして頑張りますので、よろしくお願い致します!




