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水浴び

 問題は、さらに複雑になった。


 ある日の訓練後のこと。


「水浴びに行こうぜ、ユーリ」


 クラウスが、当たり前のように言った。


 ——水浴び?


 一緒に?


「川があるんだ。汗を流そう」


 ……待って。


 それって、裸で一緒に入るってこと?


「いや、私は——」


「遠慮するな。男同士だろ」


 男同士。


 そう、男同士。


 でも——


 私の心は、女なんだ。


 男性の裸を見るのは——


 いや、クラウスの裸なんて——


「本当に、遠慮する」


「なんでだよ」


「体を見られるのが、恥ずかしいんだ」


 苦し紛れの言い訳。


 クラウスは、少し考えてから——


「ああ、そういうことか」


 納得したように頷いた。


「没落貴族で、体が貧相だから見られたくないんだな」


 ——違う、そうじゃない!


「心配するな。俺は馬鹿にしたりしない」


「いや、本当に——」


「遠慮するなって」


 クラウスが、私の腕を掴んだ。


 そして——


 強引に、川へと引っ張っていった。


◇ ◇ ◇


 結局——


 私は、クラウスと一緒に水浴びをすることになった。


 目のやり場に困る。


 クラウスの鍛えられた体が、視界に入る。


 いや、見るな。


 見たらダメだ。


「ユーリ、お前意外といい体してるじゃないか」


 クラウスが、私の体を見て言った。


「筋肉がちゃんとついてる」


「……ありがとう」


 頬から火が出るようだ。


 心臓がうるさい。


「もっと鍛えれば、俺に追いつけるかもな」


 クラウスが、笑った。


 その笑顔が——


 本当に、かっこいい。


 私は——


 この人が好きだ。


 心から、好きだ。


 でも——


 告白なんて、できるわけがない。


 男同士だから。


 彼は、私を「友達」としか見ていないから。


 この恋は——


 叶わない。


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