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かっこいい

 数ヶ月後。


 いつの間にか、クラウスは私の訓練相手になっていた。


「お前、動きが良くなったな」


 訓練の後、クラウスがそう言った。


「……ありがとう」


「素直に礼を言うのか。意外だな」


 クラウスが、私の背中をバンと叩いた。


 ——ドキッ。


 え?


 なんだ、今の。


 その時、横を通りかかった下級生が躓いて転んだ。


「大丈夫か?」


 クラウスが、すぐに駆け寄った。


 転んだ下級生——たぶん、入学したばかりの子——を、優しく起こしている。


「怪我はないか。膝を擦りむいてるな。医務室に行け」


「す、すみません、シュタルネンブルク先輩……」


「いいさ。訓練場は足元が悪いからな。気をつけろよ」


 さっき私を「没落貴族」と呼んで見下していた人間と、同じ人物とは思えない。


 下級生には、普通に優しいじゃないか。


 なんなの、この人。


「さて、どこまで話したっけ」


 クラウスが、私の方に戻ってきた。


「ああ、訓練の話だな。今度、俺と一緒に訓練するか。もっと強くなりたいなら」


 クラウスが、無邪気に笑う。


 その笑顔が——


 かっこいい。


 さっきの、下級生を助ける時の自然な優しさも。

 私を見下しながらも、実力は認める正直さも。

 訓練に付き合ってくれる気前の良さも。


 全部が——


 なんか、かっこいい。


 いや、待て。


 何を考えてるんだ、私は。


 かっこいいって何だ。


 男が男を「かっこいい」って思うの、普通だよな?


 憧れとか、尊敬とか、そういうやつだよな?


 ……たぶん。


「……ああ、頼む」


 私は、目を逸らしながら答えた。


 顔が熱い。


 心臓がバクバクする。


 ——これは、なんだ?


 エリーゼの時とは、違う。


 エリーゼを見ると、体が反応する。


 でも、クラウスを見ると——


 心が、ドキドキする。


 ……え?


 ちょっと待って。


 これって——


 いや、ないない。


 気のせい気のせい。


◇ ◇ ◇


 それから——


 クラウスとの距離は、どんどん近くなった。


「ユーリ、昼食一緒に取るぞ」


「ユーリ、今日は模擬戦の後、教えてやる」


「ユーリ、明日の野外訓練、同じ班だからよろしくな」


 いつの間にか——


 彼は、私を「没落貴族」ではなく、「ユーリ」と呼ぶようになっていた。


 そして——


 クラウスを見ているうちに、気づいたことがある。


 彼は、他の人にも優しかった。


 訓練で怪我をした後輩の手当てを手伝ったり。

 新入生が道に迷っていたら、案内してあげたり。

 食堂で一人でいる生徒に、声をかけたり。


 表向きは冷徹で無愛想だけど——


 実は、すごく面倒見がいい。


 そのギャップが——


 ずるい。


 そういうの見せられると、好きにな——


 いや、「好き」って何だ。


 尊敬してるだけだ。うん。絶対そう。


 友達——


 なのだろうか。


 男同士の友達。


 それは、嬉しい。


 でも——


 問題があった。


 私は——


 心では、彼にときめいている。


 彼の笑顔を見ると、胸が高鳴る。

 彼に褒められると、一日幸せになる。

 彼が他の女子と話していると、なんだかモヤモヤする。


 これは——


 恋、だ。


 前世で女だった私は、わかる。


 これは、恋の症状だ。


 でも——


 私は今、男だ。


 男の体で、男に恋をしている。


 これって——


 どうすればいいの?


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