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クラウス

 王立学院の校門をくぐった瞬間——


 視線を感じた。


 チラチラと、私を見る生徒たち。


「あれ、誰?」


「見たことない顔だね」


「服が……」


 ——また、これか。


 私の制服は、学校から支給された最低限のもの。


 他の生徒たちは、仕立ての良い高級品を着ている。


 没落貴族と、他の貴族の差は——


 一目瞭然だった。


「ブラント家の息子らしいよ」


「ああ、あの没落貴族の」


「よく入学できたね」


 ひそひそ声が聞こえる。


 ——社交界の時と同じだ。


 でも、もう慣れた。


 気にしない。


 私は、堂々と歩いた。


 その時——


「そこのお前」


 低い声が、私を呼び止めた。


 振り向くと——


 そこには、一人の青年が立っていた。


 長身。

 銀髪。

 碧い瞳。


 貴族らしい、端正な顔立ち。


 校内でも目立つ、美青年。


「新入生か」


 彼は、私を見下ろした。


 冷たい目。


「ブラント家の名前は聞いたことがある」


 彼は、鼻で笑った。


「昔は名門だったらしいな。今は落ちぶれたようだが」


 ——ムカつく。


 でも、事実だから何も言えない。


「まあ、精々頑張れ。没落貴族」


 彼は、そう言い残して去っていった。


 私は——


 彼の背中を、睨みつけた。


 ……誰だ、あれ。


「あ、あれはクラウス・シュタルネンブルク先輩……」


 隣にいた新入生が、小声で教えてくれた。


「王国有数の大貴族の嫡男で、王立学院でもトップクラスの実力者……」


 クラウス——


 覚えた。


 あいつは、敵だ。


◇ ◇ ◇


 それから数週間。


 王立学院での生活が始まった。


 訓練は厳しかったけど——


 私には、向いていた。


 前世の知識と、この体の運動能力。


 両方を活かせば、他の生徒には負けなかった。


「ユーリ、すごいな!」


「剣術の筋がいいね」


「さすがブラント家の血筋だ」


 周りの評価は、少しずつ上がっていった。


 ——血筋は関係ないんだけどな。


 まあ、いいか。


 実力で認められるのは、悪くない。


 そして——


 ある日の訓練中。


「模擬戦を行う。先輩と組んでもらう」


 教官がそう言った瞬間——


「俺が相手をしよう」


 聞き覚えのある声。


 振り向くと——


 クラウス・シュタルネンブルクが、私の前に立っていた。


「没落貴族。お前の実力、見せてもらおうか」


 ——上等だ。


 私は、木剣を構えた。


◇ ◇ ◇


 結果は——


 完敗だった。


 私の剣は、一度も彼に届かなかった。


 速い。

 強い。

 正確。


 全てにおいて、彼は上だった。


「まあまあだな」


 クラウスは、息一つ乱さずに言った。


「没落貴族にしては、よく動けた」


 ——悔しい。


 でも、認めざるを得ない。


 彼は、強い。


 本当に、強い。


「もう一度」


 私は、そう言った。


「もう一度、勝負してくれ」


 クラウスが、少しだけ目を見開いた。


「……負けたのに、まだやるのか」


「負けたから、やるんだ」


 私は、剣を構え直した。


「強くなりたい。だから、お前と戦いたい」


 クラウスは——


 少しだけ、笑った。


 冷たい笑顔ではなく、どこか楽しそうな。


「面白いやつだな、お前」


 彼は、木剣を構えた。


「いいだろう。相手してやる」


 その日から——


 私とクラウスの関係は、少しずつ変わっていった。


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