表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/27

入学前夜

 王立学院——王立騎士養成学院。


 王国で最も権威ある、騎士を育てる機関。


 ここを卒業すれば、王宮騎士や領地騎士として働ける。


 没落貴族の私にとっては、唯一の出世ルート。


 入学試験は厳しかったけど——


 なんとか合格した。


「入学おめでとう、ユーリ」


 母親が、涙を浮かべて言った。


「あなたなら、きっとうまくやれるわ」


「……ありがとう、母上」


◇ ◇ ◇


 入学式の前夜。


 父親が、私を書斎に呼んだ。


 普段は入れない場所。


 埃っぽくて、古い本がたくさん並んでいる。


「座れ、ユーリ」


 父親が、椅子を指した。


 向かい合って座る。


 父親の顔は、いつもより真剣だった。


「明日から、お前は一人だ」


「……はい」


「王立学院には、様々な貴族がいる。お前を馬鹿にする者もいるだろう」


 ——わかってる。


 社交界で、散々経験した。


「でもな、ユーリ」


 父親が、私の目を見つめた。


「お前は、ブラント家の人間だ。先祖には英雄がいる。誇りを持て」


「……はい」


「そして——」


 父親が、少し言葉を詰まらせた。


「無理はするな」


 ——え?


「家を立て直せとは言った。でも——お前が壊れては意味がない」


 父親の目が、潤んでいた。


「お前は、俺たちの息子だ。何よりも大切な、一人息子だ」


 ——父上。


 いつも「家を立て直せ」「ブラント家の誇りを」と言っていたこの人が。


 こんな風に言うとは。


「辛くなったら、帰ってこい。いつでも、ここはお前の家だ」


 私は——


 胸が熱くなった。


「……ありがとうございます、父上」


 声が、震えた。


 男の体だから、泣いちゃいけない。


 でも——


「俺は、お前が誇りだ。ユーリ」


 父親が、私の肩を叩いた。


 温かい手だった。


◇ ◇ ◇


 書斎を出ると——


 母親が、廊下で待っていた。


「お話、終わった?」


「……はい」


「そう」


 母親が、微笑んだ。


 そして——


 私を、ぎゅっと抱きしめた。


「母上……?」


「あなたが生まれた時のこと、今でも覚えてるわ」


 母親の声が、震えていた。


「元気な男の子だな、って。お父様が泣いて喜んでた」


 ——そうだったのか。


 いつも厳しい父上が、泣いて喜んでいたなんて。


「あなたが歩き出した時も、言葉を喋った時も、剣を握った時も——」


 母親が、私の頭を撫でた。


「全部、覚えてる。全部、宝物なの」


「母上……」


「だから——」


 母親が、私の顔を見つめた。


 涙で濡れた目。


 でも、笑っていた。


「元気でね。たまには手紙、書いてね」


「……はい。必ず」


 私は、母親をそっと抱きしめ返した。


 ——この人たちは、私の親だ。


 前世では女だった私を、男として産んでくれた。


 知らないこととはいえ——


 愛情をいっぱい注いでくれた。


 この人たちのためにも——


 強くなりたい。


 そう、思った。


◇ ◇ ◇


 そして——


 入学式の日がやってきた。


【作者からのお願い】

もし、「おもしろい」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマーク登録をしていただけるとうれしいです。また「いいね」や感想もお待ちしています!

また、☆で評価していただければ大変うれしいです。

皆様の応援を励みにして頑張りますので、よろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ