朝の問題
そして——
最大の試練が、やってきた。
ある朝のこと。
目が覚めると、体が——
おかしい。
「……え?」
下半身に、違和感がある。
なんか——
硬い?
私は、恐る恐る布団をめくった。
そこには——
「——————っ!?」
声にならない悲鳴を上げた。
なんで——
なんでこうなってるの——!?
ツクヨさああああん!!
聞いてますかあああ!!
これ、聞いてないんですけどおおお!!
前世で、男性の「朝の生理現象」については知っていた。
知識としては知ってた。
朝、男性の体が自動的に反応するという話。
モーニング・なんとか、と呼ばれているやつ。
でも、知識として知っているのと、実際に体験するのは——
全く違う!
「なにこれ……勝手に……」
私は、パニックになった。
なぜ?
どうして?
私は何も考えていないのに——
何も想像していないのに——
むしろ寝起きで頭がぼーっとしてるのに——
体が、勝手に反応している。
止めたい。
でも、止まらない。
「止まれ」と念じてみる。
止まらない。
「落ち着け」と言い聞かせる。
落ち着かない。
自分の意思と関係なく、体が——
「……最悪だ」
私は、頭を抱えた。
これが、男の体なのか。
自分の意思と関係なく、勝手に反応する。
前世では考えられなかったことだ。
女性の体は、自分の意思で制御できた。
反応したくなければ、反応しなかった。
でも、男の体は——
勝手に反応する。
自分の意思とは関係なく。
「……怖い」
私は、小さく呟いた。
自分の体なのに、自分で制御できない。
それが、怖かった。
どうすればいいの、これ。
前世では女だったから、こんなこと知らない。
誰かに相談する?
無理。
恥ずかしすぎる。
父親に? ——無理。
リーナに? ——絶対無理。
母親に? ——論外。
結局、私は——
一人で、この問題と向き合うことにした。
調べた。
古い医学書を読んだ。
使用人の会話を盗み聞きした。
試した。
失敗した。
恥ずかしい思いをした。
また試した。
少しずつ、対処法を覚えていった。
朝起きたら、しばらく動かない。
冷たい水で顔を洗う。
別のことを考える。
やがて——
慣れてきた、とは言わないけど。
なんとか、対処できるようになった。
——これが、男の体か。
面倒くさい。
面倒くさすぎる。
女の時は、こんな悩みなかったのに。
毎朝こんなことと戦わなきゃいけないなんて、男って大変だ。
でも——
男として生きていくなら、これも受け入れるしかない。
私は、覚悟を決めた。
——と思っていたのだが。
問題は、まだ続いた。
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