男の体
そして——
声だけではなかった。
体も、変わり始めていた。
鏡を見るたびに、違和感が増していく。
肩幅が広くなった。
身長が急に伸びた。
筋肉がつき始めた。
——これが、男の体の成長か。
女の時とは、全然違う。
女性は、丸みを帯びていく。
胸が膨らみ、腰が丸くなり、体全体が柔らかくなる。
でも、男は——
角張っていく。
肩が広くなり、顎が張り、骨格がガッシリしてくる。
筋肉も、つき方が違う。
何もしなくても、腕に筋が浮かぶ。
これが、男の体——
なんだか、自分の体じゃないみたいだ。
そして——
最も違和感があったのは、体毛だった。
脇毛が生えてきた。
足の毛も、濃くなってきた。
そして——
あの部分にも、毛が生えてきた。
「……なにこれ」
私は、お風呂で自分の体を見て愕然とした。
前世では、女だった。
体毛は薄かった。
処理するのが当たり前だった。
でも、今は——
どんどん生えてくる。
剃っても剃っても、すぐに生えてくる。
これが、男の体——
面倒くさい。
でも、誰に相談したらいいかわからない。
父親に聞く? ——無理。恥ずかしすぎる。
リーナに聞く? ——もっと無理。
結局、私は一人で悩み続けた。
「……誰だ、これ」
私は、鏡に映る自分を見て呟いた。
目の前にいるのは、十四歳の少年。
もう、子供ではない。
でも、大人でもない。
中途半端な——
男の子。
顔つきも、少し変わってきた。
子供っぽい丸みが消えて、少しずつ大人の顔になっていく。
髭も、うっすらと生え始めていた。
——本当に、男になっていくんだ。
心は、女のままなのに。
体だけが、どんどん男になっていく。
この乖離が——
正直、きつい。
鏡を見るのが、ちょっと嫌になった。
自分の体が、自分じゃないみたいで。
知らない男が、鏡の向こうにいるみたいで。
——でも、悪いことばかりでもない。
筋肉は、剣術に役立つ。
身長が伸びたおかげで、リーチも伸びた。
力も強くなった。
男の体、悪くはない。
……体毛以外は。
体毛だけは、マジで勘弁してほしい。




