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先達と壁

作者: 小雨川蛙

 

 ある日。

 私は壁にぶつかった。

 自らの才には自信がある方だった。

 だからこそ、この壁が決して越えられないものではないと知っていた。

 故に努力した。

 壁を越えるために。


 ――しかし、私に才はなかった。

 越えられるはずの壁を越えられないままこうして生涯を終えていく。

 それがあまりにも悔しく、私は自らの記録に嘘を一つだけ記してこの世を去った。


 つまり、壁は超えられたと。



 *


 ある日。

 俺は壁にぶつかった。

 自らの才には自信があった。

 なにせ、周囲が偉大と持て囃す先達の残した技術を全てあっさりと再現できたから。


 既存の知識を全て手にした俺が次に相手にするのは未知の世界。

 そこでも俺はそれなりに進むことが出来たが、遂にその壁にぶつかった。

 既知を知り、未知を越えてきた俺に越えられない壁はないと知っていた。

 故に努力した。

 壁を越えるために。


 ――しかし、俺に才はなかった。

 越えられそうだと思った壁を越えることが出来ずに死んでいく。

 それがあまりにも悔しくて、俺は自らの記録に嘘を一つ残して死ぬことにする。


 つまり、壁は超えてやったと。



 **


 ある日。

 僕は壁にぶつかった。

 自らの才には自信があった――。



 ***



 「ちくしょう。どうやってもこの壁が越えられねえ」


 若者が一人でぼやき、歯ぎしりをする。

 しかし、それでもあきらめない。


 「ここまでは先輩達が超えられたんだ……なら、必ず越えられる」


 未だ、人類が誰一人超えた事のない壁に向かい若者は今日も挑み続ける。

 壁が壊れるまで、あと数年――。


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