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転生したら魔王が勇者になりました。  作者: よく分からん生命体
第三章 白の死神 第一幕 相棒との出会い
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73話:子守唄

 二時間は過ぎたか、このまま何事もなく夜が明ければいいのだが。


「ん、よく寝たぁ……。」

「もう起きるのか?」

「おはよう、アルタロム。」

「おはよう」


 大きな欠伸をしてる。


 まだ数時間しか経ってないんだからもう少し寝ていてもいいのに。


「じゃあ、今度はそっちが寝る番だぞ。」


 あぁ、そういうことね。


 交代で寝ると思っていたのか。


「俺は寝ないでいいから、君がもう少し寝ていなよ。」

「いや、交代で睡眠するのは長時間の依頼なら基本だろ。

 寝ねぇと依頼に支障をきたすぞ。」


 こういう基本は知っているんだな。


「ほんとにいいんだよ、どうせ寝れないから。」

「……なんか理由があるのか?」


 口が滑ったな。


 偶然会ってパーティーになっただけの子に何を言っているんだ俺は。


 こんなこと言う必要なかったのに。


「なんでもないよ、忘れてくれ。」


 そう、なんでもないんだ。


 これは俺の問題なんだから。


「なぁ、お前昨日も寝れてないだろ。」

「それがどうしたの?」


 いや、距離が近いんだけど。


 なんで頬に手を置いてるの?

 なんで親指で目の下を擦っているの?


「ほら、隈が濃すぎて消えないじゃん。」

「あの、顔触んないで。」

「別にいいだろ仲間なんだし。」


 仲間……君と俺は昨日偶然会っただけの他人でしかないよ。


「やっぱお前寝ろ。」


 急に人の首に手を回して引き倒したら危ないだろ。


 てか、なんで俺はパッと見自分より小さい女の子によく膝枕をされるんだろう。


「頼むから……寝ろよ。」


 なんで、そんな顔してるんだよ。


 そんな泣きそうな顔で怒らないでくれ。


「あったけぇだろ、これならちゃんと寝れると思うぜ?」


 本当だ、頭が暖かい。太もも、というかこの子の体温が異様に高いのか?

 通りでこの寒さでも布団をかけなくても寝れるわけだ。


「でも、眠ったらまた……」

「怖ぇ夢でも見ちまうか?それなら、オイラがそばにいるから安心しろよ。」


 頭まで撫でられて、まるで子供みたいな扱いだな。


 俺は本当ならただのおっさんなのに、この世界の人には”アルタロム”として見られている。


 俺は最低の嘘つきだ。


 それでも、今は”アルタロム”としてやるべきことをしなきゃいけない。


「おやすみ、アルタロム。」


 この子はまるで……親のようだな。


 瞼が重い。


 この子の言う通り依頼に支障が出るかもしれない。少しの間眠るとしよう。


 どうせ、すぐに目を覚ますだろうが。


 瞼を閉じれば真っ暗な闇の中だ。

 その闇の中で”アルタロム”の姿をした俺の姿が見える。


―――――


 寝苦しい。


 また、いつもの夢を見た。

 夢だと自覚していたのに、自力で目覚めることの出来ない夢。


 今日は珍しいな、夢を見終わる前に目が覚めた。



 てか、失礼かもしれないがこの子の太もも筋肉質で硬いな。

 こんな感触どこかで……



「イフ……?」

「寝ぼけてんのか?」


 シャカだな。


 火の影のせいで髪が黒く見えた。


 イフがこんなところにいるわけないのに、俺は一体何を考えているんだ。


「まだ十分も経ってないのに起きちまうなんて、こりゃ相当だな。」

「ありがと、もういいよ。」

「ダメ。」


 力強いなこの子。

 起き上がろうとしてんのにビクともしねぇや。


 瞼はまだ重い。


 いつも通りだけど、まだ重い。


 当人にも寝ろと言われている。


 少しだけ……あと少しだけ眠りたい。


「ふーんふんふーん♪」


 何だこの鼻歌は、子守唄か?


 頭を撫でて子守唄を歌うって、完璧に俺のことを子供扱いしてるなこの子。


 でも、なんだかこの旋律は落ち着く。


 この子の子の雰囲気は一体どこから来ているんだ?


 それか、何を参考にしているのか?



 また、瞼を閉じると今度は明るい空間にいた。

 学園にいて、みんなで楽しく過ごしている夢だ。


 こんな未来があればよかったのに。



「あ、おはよう。」

「おはよう、どのくらい寝ていた?」

「六時間くらいかな?」


 寝心地は正直言うと良くなかった。

 地面も枕も硬いし、通気性なんてクソだから多少煙い。


 だけど……


「なぁ、シャカ。」

「どうした?」


「……ありがとう。」


 この半年で、初めてちゃんと眠ることが出来たような気がする。


「眠れたなら良かったよ。

 腹が減ったから飯にしようぜ?」

「そっか、俺の頭が下にあったから食べてないのか。悪い……って、待って?六時間ずっと膝枕してたの?」

「おう。温かかったろ?」


 はい。すごく温かかったですが、逆に暑かったっす。


 いや、それよりも。


「あの、痺れていたりしない?」

「ないよ。」


 すごいんだけどこの子。


 何をしたら六時間も胡座で膝枕して痺れない足を手に入れられるのでしょうか。


「どした?」

「いや、なんでもない。」


 変なことを考えるべきじゃないな。


「俺も腹が減った、食事にしようか。」

「応!」


 寝ると腹が減るんだな。


 昨日と同じ干し肉だけど、昨日よりも塩味と旨味を感じる。


「悪い夢は見たか?」

「え……、いや。久しぶりに楽しい夢を見れたよ。」


 寂しくもなったがね。


 夢で出てきて改めて思ったが、イフは(ブラン)襲来 以来連絡が取れていない。


 取り付けた影の魔力が消えていないから生きているはずだが、連絡が取れないのは(ヴィオレ)の元に戻っているからか。


 しかし、イフがいないと俺は(ヴィオレ)と連絡が取れないからな。


 (ブラン)と戦う前に一言くらい話をしたいと思っているが……。


「美味い!」

「……そうだな。」


 まぁ、今はこれ以上考えてもどうしようもない。


 依頼完了に向けて集中するとしよう。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


よろしければ、どちらかでもいいので評価とブックマークをよろしくお願いします。


正直なものでいいので感想もよろしくお願いします。

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