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転生したら魔王が勇者になりました。  作者: よく分からん生命体
第三章 白の死神 第一幕 相棒との出会い
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72話:砂漠の旅路

 シャカが強引に受諾させ、マイティグリズリーの群れの討伐の依頼に出ることになった。


「美味い!」


 なぜこいつはこんな呑気に飯を食っていられるんだ。


 というか生卵のジョッキ飲みを直で見たのは初めてだわ。


「あのさ、この依頼がどれだけ大変かわかっているか?」

「たしかに、砂漠を歩いて行かねぇとなのは大変だなぁ……。」


 そこなのかよ。


 マイティグリズリーは一体の強さがB級の魔物だ。

 この依頼はA級でも受けられるようにはなっているが、S級と遜色のない依頼だ。


 ……もしかするとこの子は本当に俺が早くランクアップできるように手助けしてくれているのか?


 だとすればなぜ?


 一体どんな見返りを要求してくるか。


 内容によってはさっさと切り捨てるべきか。


「砂漠を歩くのにポンチョを被るよな?」

「あぁ、それがどした?」

「その髪だと邪魔だろ、良かったら結おうか?」

「いいのか?それじゃあお願いするよ。」


 この子が何を考えているか分からないからな、万が一にも保険は作っておきたい。


 はい、少しチクッとしますよ。


「痛っ……、なんか刺さった?」

「悪い、静電気だ。」


 指先で 影の蠍(シャドースコーピオン)を発動させて影をこの子の体内に入れた。


 なにかあれば影で動きを止めるくらいのことは出来るだろう。


「はいできた。」

「おぉ、兄ちゃん三つ編みなんてできたんだな!」

「妹が居たからね。」


 そう、居た。


 今だって時々従者の髪を結ってやることくらいある。


「ポンチョを被るならもう少し小さくするべきなんだけど……」

「いいよ!髪が多いからな、仕方ないさ!」


 髪の長い某ネズミの国のプリンセスが髪を束ねた時みたいになった。


 いやしかし本当に毛量が多いな。


 こんなに多いのに伸ばして頭が重くならないものか。


「そいじゃ、飯も食ったことだしそろそろ行こうぜ?」

「あぁ、そうだな。」


 今回の依頼は砂漠にいるマイティグリズリーの討伐。

 そろそろ移動しないと時間が間に合わなくなる。


「食料はちゃんと持ったか?」

「持った!」

「ポンチョの暑さ耐性の魔法陣は劣化していないか?」

「してない!」


 一応の水も、魔法陣を刻んだスクロールもしっかり持った。これで準備は万端だな。


「それじゃあ、出発するぞ。」


 砂漠の旅に昼から出発するなんて前にいた世界では考えられなかったけど、こっちの世界だと夜は虫型の魔物が現れて昼と比にならないほど危険なんだよな。


 だからといって気温が変わるわけない。


 むしろこっちの世界の方が気温が高いんじゃないか……?


「アルタロム、水飲みすぎ。」

「……水は魔法で出せるし。」

「魔力は使うんだから温存しろよ。」


 ぐうの音も出ない。


 魔力は体力と同じで、健康的な生活をしていないと回復率が激減するからな。


「だとしても暑いんだよ、仕方ないだろ。」

「飲みすぎたら腹下すぞ。」


 さすがにそんなことにはならないよう善処します……。


 しかし、前の世界同様に砂漠の生物は昼には動かないんだな。


 こんだけ暑ければ当然だが。


―――――


 しばらく歩いて来て、暗くなり始めたが会話が少ないせいでシャカがちゃんと着いてきているのか不安になるな。


「アルタロム、そろそろ拠点を作らないと暗くなっちまう。」

「よし、それじゃあここで野宿しようか。」


 砂漠での野宿は地魔法を使ってほぼ密閉したドームを作る。


 小さい換気用の穴をいくつか作る必要はあるが、下手に入口を作ると虫型の魔物が襲いかかってくるからな。


 岩石の要塞(アースフォートレス)


「広さはこれくらいでいいかな。」


 俺たち二人が同時に寝ても決してぶつからないくらいには広く作った。


「へぇ、アルタロムは詠唱をせずに魔法を発動できるんだな。」

「まぁね。」


 魔大陸では魔人が多いからな、あまり他者の能力について言及してくるやつはいない。


 大概のことを都合よく解釈してくれるから結構助かるんだよな。


 火球(ファイアボール)


 ドームを作ったら焚き火をして煙で魔物避けをしなきゃな。


「さて、明日は出来るだけ早く行動しよう。食事を摂ったら寝てくれ。」

「はーい。」


 今は日が暮れたばかりだ。

 食事とシャカが寝る時間を考えれば10時間が妥当か。


 今を十九時だと仮定すると、四時くらいには行動準備をして動き出せるか。


「それにしても、こんな砂漠でも熊は動けんだな。」

「そうだな、それは高ランクの魔物だからこそだな。」


 こんな過酷な環境下でも、生存能力と繁殖能力の高さで生き残る魔物は少なくない。


 実際、生命力が高く食事量の少ない虫型の魔物。

 強力で捕食対象を蹂躙し続ける高ランクの魔物たちが生き残っているのがそれを証明している。


「美味い!」

「ただの干し肉だよ?」

「美味いもんは美味いんだよ!」


 なんでも美味そうに食べるな。


 砂漠の旅だからな、味のほぼしない干し肉とかレーションみたいな乾燥した保存食を食べる。


 だから、こういう風に明るく食べている人間を見ると俺も味がするようで気分が明るくなる。


「ご馳走さん!」

「食べ終わった?それなら、先に寝な。」

「あぁそう?それじゃあ先に寝かせてもらおうかな?」


 無警戒だなこの子。


 俺とパーティー解消したあと他のパーティーで襲われたりしないだろうか。


「あ、寝る前に髪ほどけよ?」

「でも結いなおすの面倒だろ?」

「どうせ結い直すし、跡になったら結いにくいんだよ。」

「それじゃあお願いしようかな!」


 豪快に解いたなぁ。


 やめて、髪の毛振り回したら届くから。叩かれていたいから。


「すー……。すー……。」


 はい、寝落ちも早いです。


 しかも大の字で寝るなよ。

 本当に大丈夫かこの子、あと砂漠の夜のこの寒さで布団をかけずに寝るって……。


「……はぁ、仕方ないな。」


 依頼の前に風邪でも引かれたら洒落にもならん。

 あまり厚い布じゃないけど、何もかけないよりはマシだろう。

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