61話:不死鳥の戦乙女
改めて状況を整理しよう。
俺はやつの腕を切り落とした。その断面からやつは爆発を起こして自爆した。爆発の威力は俺の影を砕くほどだ。
煙が晴れた後のやつは切り落としたはずの腕も、自爆した傷も全部何事も無かったように回復してた。
やつの能力は爆破と再生であるとして、 能力に共通している部分は、血……かな。
「爆ぜろ!」
直後、血の煙が爆発を起こした。
よく見てみると爆発が起こる前にやつの瞳から魔力が放出されている。
爆破の発動条件は体外の血液を視界に入れて魔力を送るってところかな。体内のは直接魔力を流せばいいだけだ。
「ふむ、動きが変わったのぉ。爆撃に当たらなくなっておる。
儂の固有魔法について理解したようじゃの?」
「皮肉なことに何回も食らって覚えたよ。」
俺が受け続けていた爆発は大した威力ではなかった。霧状に霧散させているとその分威力が分散しているようだ。
やっぱり爆発の威力は血の量に依存するみたいだな。
よく考えたらこいつは一体なんの種族なんだ?
他者の体を乗っ取っているということは魔人だと思うが、こんな固有魔法を持っている魔人は心当たりがない。
血を操る……吸血鬼か?
いや、羽の形が違うし、あいつらの血液操作は血液が体外に出たら形態変化くらいしかできない。
再生力は吸血鬼と言われれば納得できる。
だが吸血鬼に血を爆破させる能力はないし、吸血鬼の再生の仕方とはまるで違う。
ほかの特徴と言えば、羽か?
しかし獣人でもないのに鳥の羽が生えている種族なんて聞いたことが……
いや、そっか。こいつは白の配下だ。
ティスのことを思い出せよ、白は配下のことを都合のいい道具としか見ちゃいない。
こいつもそういう類のやつか。こいつの種族が魔人であるとは言いきれないってことね。
それなら……心当たりがある。
「なるほどね、お前の種族がわかったよ。」
「なんじゃと?」
動きを止めた、種族がバレることに何か思うところがあるのか?
なんにせよ警戒を緩める訳にはいくまい。
「面白い、其方の考えを聞かせてもらおうかの。」
「色々考えたんだよ。それでようやく理解したよ。
お前、獣人だろ。それも、不死鳥の。」
「……。」
沈黙ね、てことは当たりかな。
てか、初めて黙ったなこいつ。
「なぜ、そう思った?」
「魔人の中にお前と同じような能力を持っているやつがいなかったからな。
種族についても考えてみたら、お前の特徴に合うやつがいたってだけさ。」
とはいえ当てずっぽうだったんだけどね。
「それがわかってどうする?」
「種族が分かれば対策の仕様はあるだろ?」
不死鳥は文字通り決して死なない。
外傷はすぐに治り、寿命も存在しない。
一番簡単な方法は一切傷つけずに拘束することなんだけど……。
「そうじゃの、それなら対策させねば良いだけじゃろう!?」
自傷して血を撒き散らした。
撒き散らした血が発光し始めたってことは、爆発を連鎖的に起こすよね。
"ドドドォォン"
正体がバレればそういう広範囲攻撃で近づけさせないようにするよね。
こうなると、こっちは待ちの姿勢を崩せなくなる。
下手に攻撃をしたらカウンターをされるからな。
「そういう行動に出るのは予想はしていたけどさ?でも、フロガの身体を傷つけんなよ。」
「この体は既に儂のものじゃ、其方に指図される言われはない!」
やっぱりそういう返ししてくるよね。
「しかし、この体は強靭じゃがのう、男であることが不満じゃ。昔の儂は戦乙女と呼ばれたものじゃがなぁ……。」
「……え、待ってお前って女なの??」
「そうじゃが?」
え、キモこいつ。
女、えっ、ダメだ、こいつキモい……。
「なにか無礼なことを考えておらぬか?」
「ごめん。色々考えたんだけど、わざわざ女の体とは程遠いフロガの体を乗っ取るお前がキモイという回答しか出てこなかった。」
「……魔王とはいえか弱い女子に対してそのようなことを言うのは無礼ではないか?」
「今のお前は女でも、ましてやか弱くもないだろ。」
また爆撃の動作。
"ドォォン"
爆撃を避けるのには慣れてきたけど、ちょっといらん情報が入ってきて頭こんがらがってきた。
ああいう台詞は本当に女の姿をしていたなら、なにか思っていたのかもしれないけど。
うん、フロガの見てくれで言われても……擁護の仕様がないや。
「無礼な其方には罰を下さぬとな?」
何を言って……
あ、やばい。飛び込んだ先で刺激臭が強くなった。
血の煙に囲まれてる……、それも今まで以上に濃い血の煙に。
「さぁ、爆ぜろ!」
影で防御しても間に合わない。
直撃したら死ぬ───
「ウォォォォン!!」
血に染った空に遠吠えが響いた。
直後に煙が払われ、敵は動きを止めた。こんなこと出来るのはあいつしかいない。
「良かった。無事だったんだな、フェル。」
どこにいたかは分からないけど、 原始化 した状態で駆けつけてきたんだな。
「ありがとう フェル。でも、お前はすぐに避難しろ。」
原始化した状態で駆けつけたということは継続時間は残り少ないということだ。
使用後は動けなくなるフェルを守りながら戦うのはそれこそ無謀だ。
「グルルルルル……」
「頼むよ、フェル。」
俺に攻撃して来ない以上、知性を保ったまま原始化をしている。俺の声は聞こえているはずなのに、指示を無視している。
「ウォン!」
「フェル待て!突っ込むな!」
「畜生が……爆ぜて死ぬがよい!」
やつが撒き散らした血の爆発を何発食らってもフェルはものともせず、容赦の無い攻撃を食らわせた。
……そうだよな、お前はフロガに懐いてたんだもんな。
悔しいよな、憎いよな。
「仕方ない、さっさと方を付けるぞ!」
「ウォン!!」




