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5話:再会

 父が死んでしまう。

 村のみんなが死んでしまう。


「フェル!」

「お父さん……?」


 気を失っていたようだ。一体何が起こっていたのか……。


「ひっ……!」

「え、どうしたの皆?」


 村の人達が怖がっているように見える。

 何に対してか、そんなことはすぐに分かった。


 私だ。


 私を見て皆震えている。

 小さく悲鳴をあげている。

 子供は大泣きし、大人は私を恐れている。


 皆あんなに優しかったのに。


 「おぇ……っ」


 思い切り吐き出した。

 分からない、どうしてこうなってしまったのだろう。


「水を司る神々よ 我が命に応じその力を示せ 

 大雨(スコール) 」


 聞き慣れない声がした後にいきなり大雨が降り始め、火を消して雲はすぐに消失した。


「どうやら、貴様らはこの村に居場所はないらしい。」

「なっ、そんなことを言わないでください!」


 見慣れない顔の男の無情な言葉に父が反応して怒り気味に反論した。

 しかし、この男の言うことは正しいだろう。

 ここまでほかの村人に怖がられていれば何をされるか分からない。


 だが、この村以外でどこで生きていけと言うのだ。私には想像もできない。


「お前たちには俺の屋敷に来てもらいたい。」


 突拍子のない話に私と父の二人は男の方を向いてしまった。


「どうせこの村では子育てなどできまい。

 娘のことを考えれば私の屋敷で雇われるべきだと思うが。」


 父は悩んでいるようだった。

 本当に突然の話だ。

 どういう思惑なのかは分からない。だが、奴隷にされるような雰囲気ではない。


 男の身なりを見ればそれなりに裕福な生活はしているようだ。


 この男は強制はしていない。


 雇うと言っているのだ。どういった条件かは想像もできないが、この男の話は渡りに船だろう。


「お父さん、このお話受けよう? 」

「えぇ!?」


「……娘の方が賢明のようだ。」


 お父さんは驚いている。

 当然だろう。子供がこんな話に口を挟むなんてことはおかしな話だ。

 だが、この男はそんな様子を見ても動揺している様子は無い。


 なんとなく、この男について行った方が良い気がする。


 結局、私の押しに負けて父と私は男について行くことになった。


 移動方法は不思議だった。

 男の傍に寄ると影に沈むように吸い込まれ、次に目を開けると立派な屋敷の前だったのだ。


「ナナ、ザザ、この者たちの身なりを整えさせろ。」

「承りました。」


 男は屋敷の中に入るや否や他の従者を呼び出して私と父を任せてしまった。

 一番の驚きは呼び出された従者が二人とも獣人であったことだ。


 私は触手を生やした女の獣人に連れられて風呂に入れられた。


「アンタ、名前はなんて言うんだい?」

「……フェル。」

「フェルかい!可愛らしい名前だねぇ。

 アタイはナナって名前だ、よろしくねぇ。」


 楽しそうに話しかけてくる、距離が近いこの獣人のおかげで少し強ばっていた体が楽になれた気がする。

 そういえば、風呂なんていつ以来だろう。

 この世界に転生してからは水で濡らしたタオルで体を拭いていただけで汚れは取れていなかった。

 広々とした風呂に入ったら体がポカポカとしてくる。


 「ほら、綺麗になっただろう?」


 鏡を見せてくれた。確かに、泥で汚れていた髪の毛が艶のある銀色の光を放っている。


「似合うだろう?」


 風呂から上がると小さなメイド服が用意されていた。着せてもらったがピッタリのサイズをしていてなんだか恐怖を感じた。


 案内された部屋で父と合流した。

 父は着せられた執事服に慣れないのかムズムズとしていた。


 「フェル、よく似合っているよ。

 お前ならばわかっているだろうが、これから来る人に対して粗相のないように頼むよ?」


 父に釘を打たれた。そんな不安がらずにいて欲しい。

 あの男の話を受けようと言ったのは私だ。私が下手のことをして台無しにすれば私だけではなく父にまで危険が及ぶ。

 そんなことするまい。


「入るぞ」


 男はノックなしに バンッ と音を立てて勢いよく扉を開いて入ってきた。


 その瞬間、なにか違和感を感じた。


 前にも感じたことのある魂の気配を感じ取った。


 これは閻魔の能力か。


 転生してから気が付かなかったが、どうやら多少は閻魔の能力が引き継がれているようだ。


 つまり、この場に私と同じ、私が会ったことのある転生者がいるということだ。


「もう、急に入ったら驚かしちゃうでしょ?」


 あいつだ。


 金髪の長髪の女に抱えられた赤子。

 私と同じくらいの年齢だろう。つまり同時期に転生した私の会ったことのある者……心当たりは一人しか居ない。


 佐藤という名の、あの(わっぱ)だ。

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