52話:子守りの人形師
迷子になっていた子供がお腹がすいたと言ったので、好きな物を尋ねたら食堂らしき場所を指差した。
俺とクリムはその子を連れて食堂に入ることにしたのだが、中は賑わっているようだ。
「すごく賑やかですね。」
「物凄く……ね。まぁ、中に入ってみれば慣れるだろう。」
扉を開けると店内から更に大きく賑々しい声が飛び出してきた。
「いらっしゃい!
って、マロンの坊主じゃねぇか!あんたらは……誰だい?」
この子はマロンくんと言うのか。聞いても答えてくれなかったからな、ようやく知れた。
どうやら、この店主はこの子のことを知っているようだ。
「この子が迷子になってるところを見つけて、今はこの子のお母さんを探しているんです。
何か知っていることがあればお聞かせ願えますか?」
「そういう事か、それならいくらでも話してやるぜ?」
この子の親の話を聞ければ幾分か探しやすくなるだろうな。
ホースも探してくれているらしいが、そういえばどうやって探しているんだろう?
「おじちゃんお腹空いた!」
「それじゃあ飯食いながら話すか!空いてるとこ座んな!」
「ありがとうございます。」
三人が並んで座れそうな席はどこにあるだろうか。
さっきからクリムは辺りを見渡してないで席を探して欲しい。
王女様はこういうところにはあまり来ないから新鮮なのだろう。
四人がけのテーブルか。誰か座っているようだがあと三席は空いているし、相席させてもらおうかな。
「すみませんが相席よろしいですか?」
「あ、私はもう終わったのです……。すぐに退くの……って、アルタロムさん?」
「イフ!?」
休日に迷子を見つけたと思えば数の少ないクラスメイトと二人も遭遇するなんて、こんな偶然あるのだろうか。
「アルタロムさんその子は誰なのです?
それと後ろにいるのはクリムさん。
まさか……?」
「イフ?何を考えているのかは分からないが多分君が考えているような状況ではない。迷子を保護しているだけだよ。」
変な勘ぐらないで欲しい。間違った情報を紫に流されたら一体何をされるかわかったものじゃない。
「そうなのです?
なら良かったのです……。」
「それより、ご飯の邪魔しちゃったみたいで悪いね。」
「だ、大丈夫なのです……!」
イフの様子がなんだか少しよそよそしいような気がする。
疑われている?
いや、さっきは純粋に納得しているようでそんな様子はなかった。
「それじゃあ失礼するのです。」
「あぁ、気をつけてな。」
一体何なのかは分からないけど、次の学期までには蟠まりは解消しておきたいな。
「お待ちどうさま!」
「オムライス!」
椅子を並べて座った途端、まだ注文していないのに店主が料理を持ってきてくれた。
オムライスか。マロンのはしゃぎようから好物みたい。
マロンの好物をこの店主は把握しているみたいだな。それだけ普段から来ているということなのか。
「いただきます!」
「あ、待ってください!?エプロンをつけて!」
「あ!マロン君待って!その食べ方危ない!」
皿の端に手を置いていて、このまま体重をかけたら皿がひっくり返る!
「ダメなのです。」
ぬいぐるみが皿を抑えた。
このぬいぐるみは確かイフの物だ。ということは……
「イフ?どうして戻ってきたの?」
「なんだか、後になってからお二人だけだと危ない気がしたのです。」
その予感は的中しました助けてくれてありがとうございます。
「アルタロムさん退いてなのです。」
「あぁはい。」
俺を立たせてからイフはマロンの横に座った。
急に知らない人が隣に座ってきたからか、マロンは少し警戒しているように見える。
「こんにちはなの。君のお名前はなんていうの?」
「マロン……。」
案外素直に答えたな。俺の時は色んなものに目移りして答えてくれなかったのに。
「素敵なお名前なの。
マロン君、良かったらお姉ちゃんと一緒にご飯を食べて欲しいの。」
「……うん!」
あそこまで警戒していたマロンが少しの会話で物凄く笑顔になった。
「すげぇなあの子。人見知りのマロンの坊主が心を開いてやがる。」
「マロン君って人見知りの子なんですか?」
「あれ、そういやあんたやあの金髪の子にも懐いてんな。こりゃ明日は雨でも降るかね。」
人見知り……。確かに初めて会う人に対しては俺の影に隠れようとしたり、顔を隠していた。
フロガに至っては話しかけただけで大号泣だったな。
どうして俺にはいきなり抱きついてきたんだ?
「あーんなの。」
「美味しい!」
「それは良かったの。」
イフは子供の扱いが上手いな。というより世話し慣れているような……。
「それじゃあ、マロンの坊主が食ってる間に色々と話しちまうか。」
「あ、そうだった。よろしくお願いします!」
こんなところにイフがいたり、マロンから目を離せなかったりと色々な事が起こって少し忘れてたな。
「あの子の母ちゃんはな、 ツユリって言ってな。マロンと同じ栗色の髪を腰まで伸ばしているんだよ。」
やはり髪の色は同じか。今まで歩いていた中で栗色の髪で方まで伸ばした女の人はいなかったな。
「それでいて、顔も良くてスタイルが良い。ちょっと背が高ぇのが気になるが、最高の女だよ!」
下心丸出しな発言だな。
だけど、背が高いのか。スタイルがいいということはスラッとしているのだろうし、注意深く探していれば目立つな。
「あんた!!いい女はここにいるだろう!?」
その場に物凄く良い カーンッ という音が響いた。
痛い。なんか頭に固い物が飛んできた。
「おい兄ちゃん大丈夫か!?」
なるほど。厨房から奥さんがフライパンを投げつけてきたのか。それが偶然俺に当たったと。
あ、やばい。意識が遠のいていく。




