46話:花は咲く
試合が進むにつれてフロガの動きが悪くなっていってる。フロガは息を切らしていて、俺は剣が手元にある状態。一見有利に見えるがそうでも無い。
見やすくて避けやすいが、油断はしない。一撃でも喰らえばここから捲られる。
「アルタロムさんの動き、私の舞に似ている気がします。」
クリムがそういう。当然、俺はその舞を使えるし、今も応用している。
この舞は水流をイメージして作られている。舞が遅ければ攻撃を流し、速ければ強力な攻撃に転じる。
「ちょこまかうざってぇなぁおい!」
そういえば、初めてエルに見せてもらった時すごく惹かれたんだよな。
今では実践でも使えるくらい舞えるようになったけど、覚えるのは大変だったな。
「考え事かぁ!?」
「悪いね、思い出に浸っていただけさ。」
ようやく、反撃してもフロガは防御できるほどの体力はなくなった。
そろそろ攻撃に転じるとしようか。
「フェルちゃん、浮かない顔しているの。」
「え、そうですか?」
「そうなの。フェルちゃんはもっと自分の思っていることを声に出した方がいいと思うの!」
「……そうですね。」
本来は筋肉が硬すぎて切ることの出来ないフロガの体だが、今は握力が弱くなっている。
今のままなら剣が正面から当たれば斬れる。
切り落とさなくても深く切りつければそれで勝てるな。
「フロガ!頑張ってください!」
「あ?」
「……は?」
フェルが大きな声で応援をしたのはフロガ。
分からない、どうしてそうなったのか分からない。
ほら、周りの人も訳が分からなくて止まっちゃってるよ。
「あ、義兄様も頑張ってください!」
おまけ感があるなぁ。
フェルはフロガに対して何かしら思うところがあるみたいだよな。
一体何を考えているのか、どう思っているかは分からないが。
「お、おう!
……勝って、あいつと戦りてぇもんな。
そうだわ、負けらんねぇんだ!」
フロガは独り言みたいに呟き、顔をパンッと叩いて気合いを入れ直したようだ。
全く、これで俺の計画は泡になっちゃったよ。
瞬間。フロガが踏み込む。
……っ!
応援を受けて息切れを起こしていたのが嘘みたいに速く強くなった。正拳突きを受けるのに一瞬遅れた。
「ちょっと守りが甘いんじゃねぇの!? 向日葵 !」
まずい、拳に気を取られすぎてた。
フェイントからの回転蹴りはよくやってる。
なのに、早すぎて掠った……!
「当たったよなぁ!」
相手が体勢を崩した時、フロガは正面から攻撃を繰り出してくる。
よく引き付けてから薙ぎ払う!
「さすがによく見てるよな。」
(あんな状態じゃ見え見えだよな……。)
フロガは飛び上がって避けた。
でも剣を振った慣性がまだ残ってる。体勢を整えられない。
「脳天ガラ空き! 激藤 !!」
突風
俺とフロガの間に突風を発生させることで攻撃の軌道をずらしつつ、お互いに正反対の方向に吹き飛ばされた。
「うぉあ!?」
距離は取れた、取れたけど!
やばい咄嗟に魔法を使ってしまった。詠唱もしてないし、ちょっとやばすぎる。
「ちっ、魔道具まで使ってくんのかよ!どんだけ勝ちてぇんだ?」
「ま、まぁね!どうしても勝ちたいからね!」
危ねぇ……!
フロガが魔道具と勘違いしてくれたおかげで誤魔化せそうだ。
もう使わないように気にしながら戦おう。
「アルタロムさん無詠唱で魔法を使っちゃったの。」
「ムキになっていますね。」
「……フェルちゃんがモテモテだからなの。」
「え?今なんて言った!?」
観覧席が騒がしいな、一体何を言っているんだ?
「よそ見してて良いのかよ!!」
良くはなかったね。
このままじゃ押し切られそうだ。かと言って攻め込めばカウンターを喰らいそうだし、どうするか……。
「炎の神よ 我の命に応じ力をお貸しください
緋衣草」
「はぁ!?」
フロガが戦闘中に魔法を使った!?
想定外すぎて反応が遅れた、炎が地面から吹き出してきて動きが一気に制限される?!
「俺だって、勝ちてぇんだよ!!」
炎の中を突っ切ってきた!?
いくら体が丈夫だからって暑いだろうに。
「彼岸 !」
正面から殴り込んできた。当たれば負けだろうな。だけど……
「その技は一回受けているんだよ!」
フロガは技を出した後は一瞬だけ硬直する。受け入れれば絶大な隙になる。
もう剣で攻撃して受け流すことは出来ない。だから、初見の時と同じように柄で受け止める!
「おらぁ!!」
"カァァァン"
出来た!相変わらずの馬鹿力だな、手がビリビリと痺れる。
「これで、終わりなわけねぇだろ?」
殴った手でそのまま剣の柄を掴んできやがった、反動とかどうなってるんだよ!
「多重咲きって知ってるか?」
握力どうなってるんだよ、柄ごと手掴んで全然離さないんだけど!
「花ってのは何重にも重ねて咲くらしい。だから、俺もやってみようと思ってよ。」
左手を握りこんで……。
まずい!どうする、蹴ってみるか?
いや、この距離じゃ威力が足りなくて抜け出せない!
「喰らえよ。彼岸・二重咲き」
腹に。フロガの攻撃が直撃した。
なんて威力だ、二発目だろ?連続して攻撃しても威力が下がらないってどうなってんだよ。
攻撃の勢いは消えることなく、俺は後方に一気に吹き飛ばされてしまった。
回りすぎた、気持ち悪い。
腹痛い。頭痛い。ここどこ?
「アルタロム・ダレス 場外。」
「え……?」
一発で場外に吹っ飛ばされたってことか?
ダメだ、頭打って思考がまとまらない、負けちゃいけないはずだったのに負けた。
「アル、大丈夫か?」
「うん、大丈夫。」
結界の魔法でもう痛みは無いし、頭がフラフラするだけで俺はもうなんとも……
「あ、フロガ!」
「あ?うぉ!?」
これだけは言わなきゃ。
「あの、次の試合は、あんまり乱暴にしないでやってくれ。」
「お前は過保護すぎなんだよ。」
「あぅ……。」
笑いながらデコピンされた。
その景色が最後に、俺の意識は遠い場所に消えていった。
───
フロガにそう言って頼んだアルタロムは、フロガの手刀で意識を失った。
気を失ったアルタロムを抱えてフロガは観覧席に戻ったが、フロガは少し考えた後アルタロムの剣を拝借して舞台に戻って行った。




