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転生したら魔王が勇者になりました。  作者: よく分からん生命体
二章 勇者学園 第一幕 勇者のタマゴ
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12話:勇者学園

 見慣れた天井を見て目が覚めて起き上がる。


「おはようございます、アルタロム様。」

「おはよう。」


 部屋にされたド派手な装飾が嫌でも目に入る。エルの仕業だろう。

 この装飾を見ると俺とフェルがあってから今日であの日から10年も経ったのかと思い出される。


「お着替えはどうしますか?」

「着替えてから向かうよ。先に食堂に行っておいて。」


 フェルはずっと俺の身の回りの事をほぼ一人でやってくれている。

 この数年でロロも仕事に慣れたようだがまだ未熟な部分が目立つ。


「おはようございます。」

「アル おはよう!」


 食堂に向かうとエルはニコニコとこちらに笑顔を向けていた。


「お食事ができました、早く座って下さい。」


 フェルは最近俺のタイミングに完璧に合わせてくるようになってきて怖い。


 あの日、父から誘われた日以来フェルも食事をする時は一緒にするようになった。


「二人とも、やっぱり行っちゃうの?」

「行きますよ。」


 俺とフェルは今日から中央大陸の王都にある勇者学園に入学することが決まっている。


「アルもフェルも、二人とも勉強も魔法もちゃんとできているよ?」


 エルは子離れができないと見えた。何かと俺とフェルが学園に行こうとするのを止めて来る。だが、俺は学園に行かないといけない。


 父の目的を知るために。


 父は10年前のあの日から姿が見えない。

 夢の中で何かを言われたような気がするが思い出せない。


 だが、父が一体どうなったのかは想像できる。


 早々に食事を終え、俺は自室に戻って学園に向かう準備をする。


 学園は寮が存在し、俺とフェルは今日から5年間学園の寮で暮らすことになるのだ。


 ちなみに、フェルが一緒に行く理由は「アルタロム様を一人にすると不安なので。」だそうだ。

 誰に似たのか、最近のフェルは多少過保護なように見える。


「準備できましたか?」

「うん。そろそろ行こうか。」


 フェルの準備も終わったようで、早速出発することにする。

 ほかの従者はまだ寝ているだろう。まだ日も昇っていない時間だ。


「お母さん お見送りありがとうございます」

「ねぇアル、こっちおいで。」


 言われた通りに俺が近づくと、エルは俺の首に手を伸ばし、抱きしめてきた。


「行っちゃう前にアルを補給させて?」

「……うん。」


 こういう時は逆らわないでおこう。長いこと家を空けるんだ、少しくらい甘えさせても……甘えてもいいよな。


「ほら、フェルもこっちおいで。」

「え、いや私は……」

「いいから来なさい。」


 エルの落ち着いた声に、フェルも渋々エルに抱きしめられた。

 こうやってフェルと一緒にエルに抱きしめられるのはいつぶりだろうか。


 次はいつになるだろうか。


「はい!もう満腹だよ!

 ……それじゃあ二人とも行ってらっしゃい!」

「はい!行ってきます!」


 フェルに俺の傍に寄ってもらい、影移動で中央大陸に向かった。


「何回やっても慣れませんね。」

「そうだな。」


 影に沈む感じは溺れているような気がしてどうしても慣れない。

 もう少し時間がたてば慣れるものなのだろうか。


「えっと、ここからどっちに向かうんだっけ。」

「南西の方向です。」


 影移動でいきなり街に出ることが出来ないからしばらく歩くのは面倒だが、フェルと俺は王都周辺の森の中に転移して歩くことになる。


「フェル、荷物は俺が持つよ。」

「いえ、むしろ私が持たせていただきます。」

「いや、妹に荷物を押し付ける兄がどこにいるんだ?」

「……それならお願いします。」


 勇者学園に入学するにあたり、フェルは俺の義理の妹ということになっている。


 勇者学園には奴隷一人まではお供に連れていくことが出来るらしく、最初フェルは建前上俺の奴隷になるとか言い出した。

 奴隷というのは俺があまり好かないからな。

 学費がかかると言って渋っていたフェルも最終的に納得してくれた。


 それに、フェルが奴隷なら実力で負けている俺の立つ瀬がない。

 奴隷が強くて威張るような嫌な貴族のように見られたくないしな。



「着いたな、エリュシオン。」


 エリュシオン王国 首都「エリュシオン」


 精霊の住処と言うべき神樹の周りに作られた国。

 神樹の恵を一身に受けて発展を繰り返したことで、今では人間の住む中央大陸において最も発展している大国だ。


「アルタ……義兄様(おにいさま)、入国証をお渡しします。」


 (すごく呼びずらそう……。)


 人間の住む中央大陸では差別意識が強い地域が多い。

 入国するだけで入国証を発行する必要があるのだ。

 無くしてしまえば発行に時間がかかるため、「持たせておくと無くすだろう」と言われフェルに預ける……基い没収されていた。


「入国証を拝見します。」


 入国審査官は俺の体をマジマジと見て魔道具を使って魔法を発動させた。


「問題ありませんね、どうぞお進み下さい。」


 入国時には入国証以外にも色々と確認されることがある。


・申請されていない危険物を持っていないか

・種族がなんなのか


 である。


 前者は当然であるとして、後者は入国時に必要なものがあるからだ。


「獣人の方ですね、では銀貨三枚を支払ってください。」


 入国時に人間以外の種族からは入国金を請求されるのだ。

 それにしても、ペットとかで連れ込まれる魔獣と獣人が同じ金額であることに悪意を感じる。


「お待たせしました。すごい賑わいですね。」

「そうだな。」


 街の楽しそうな雰囲気に目をキラキラとさせているフェルを見ているとムカついていた気持ちも忘れてしまう。


義兄様(おにいさま)!どこから回りますか?」

「はいはい。学園に向かうぞ〜。」


 興奮しすぎて目的を忘れていないだろうか。

 まぁ、生まれ変わってからずっと祭りとは無縁の生活をしていたし。

 ちょっとくらいははしゃいでもいいのかもしれないな。


 フェルの襟首を掴んで学園の前まで着いた。


「あの、学園着いたよ……?」

「お肉……」


 そんなに行きたかったのかコイツ……。


「わかったよ、休みになったら買ってやるからシャキッとしろ。」


 そう言ったらすぐに姿勢を正しくして先を歩き始めた。

 現金なヤツめ、本当子供っぽいところは変わらないな。


 デカい門抜けると、一気に雰囲気が変わった。

 街のお祭り騒ぎの空気とは全く違う、水面みたいに透き通って落ち着いた空気だ。


 ここで、親父の秘密を俺は知ることになる。


「ぐぇ!?」


 (え、何、何が飛んできたの?)


 学園に入って、歩き始めた瞬間俺目掛けて何かが飛んできて巻き込まれた。


「張り合いねぇな、勇者学園ってのはこんなもんなのか?」


 赤みがかった茶色の短髪に着崩した制服を身にまとった男が歩いて近づいてくる。


 なんだこいつは。

魔道具について

 詠唱の代わりに術式を使用して魔法を発動するための道具。

 魔力消費が多いが使い続けられる物や、使い捨てで魔力消費の少ないものなど、種類は多種多様に存在している。


貨幣について

 この世界の貨幣は全ての大陸で共通の貨幣が使用されており、五種類である。

 日本円換算にして銭貨が10円、銅貨が100円、銀貨が1000円、金貨が1万円、白金貨が100万円である。


入国金について

 魔獣と獣人は銀貨三枚。

 妖精族と小人ドワーフは銀貨一枚。

魔人族に至っては白金貨五枚と入国させる気のない金額をしている。

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