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塩澤莉奈は土曜日の部活終わりに、ケセラセラに立ち寄ることにした。莉奈が行ったのは12時30分頃だったけれど、すでに長蛇の列ができている。テレビに出ていた効果やSNSで拡散された影響もあるのだろう。
「うわ、長っ……。これまじで買えんのかな」
莉奈がそう呟くと、後ろに並んでいた30歳前後の男性に声をかけられる。
「すみません……。これ、あとどれくらいかかりそうですかね?」
「多分30分くらいはかかるんじゃないですか?」
莉奈が返事すると、男性はこう言ってきた。
「ありがとう! てか君よく見たら可愛いじゃん。JK? 第二高生? 女優の藍村楓純ちゃんに似てる!」
「は、はあ……」
莉奈がいきなりそう言われて反応に困っていると、男性はさらに畳み掛けて言ってくる。
「てかさ、この後ホテル行かない? ホテル代は俺出すし、お小遣い5万あげるから」
「は……? 何言ってるんですかあなた……」
列を整理しながらそのやりとりを聞いていた直幸が、困惑する莉奈の様子に気づいて
「はいそこまでです。警察呼びますね」
と2人の間に入った。
「何すかあんた、客に向かって……!」
激昂する男性に、直幸は毅然とした態度で言い返す。
「当店には迷惑行為をされる方に売る商品はありません。あなたのしていることは迷惑防止条例違反になります」
男性はこんな店2度と来るかと捨て台詞を吐き、立ち去った。
「……大丈夫でしたか?」
直幸が莉奈に声をかけ、莉奈はほっとしたのか泣きそうになっている。周りからは拍手が湧いた。直幸は並んでいたお客さんに
「お騒がせしてすみませんでした。なるべく早めに提供しますので少々お待ちくださーい!」
と声をかけ、キッチンカーに戻る。