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12月19日に、平塚直幸は29歳の誕生日を迎えた。学生アルバイトの冨澤ゆあと赤松悠人と丸山海月は大学4年生になり、正社員の菊村恭志と大岡尚紀も入社当初から勤務し続けている。そこに新しくメンバーが増えた。というのも「株式会社ケセラセラ」として会社を設立し、直幸は社長になったからだ。
アルバイトで女子大学生の嘉村陽向子と都倉文乃を、男子大学生の徳山伊織と羽鳥海翔を新しく採用した。正社員として26歳の岩井睦樹と27歳の亀野百合を迎え入れる。パートスタッフはいずれも主婦の鈴田弥生と鬼島秋美だ。
12月19日当日は直幸の誕生日をお祝いしようと、営業終了後にスタッフ総出で居酒屋で飲み会をした。
「ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデー、ディア……」
スタッフみんなで歌を歌う。
「株式会社ケセラセラ代表取締役社長、平塚直幸さん」
それから長文をみんなで言い、直幸が
「ちょっと、長いな」
と笑いながら言った。それからスタッフみんなが
「ハッピバースデートゥーユー!」
と歌い、直幸がケーキに刺さった蝋燭の火を吹き消す。それからはみんなで飲んだり食べたり談笑したりし、一次会が終わる。
それから二次会でカラオケに行こうという話になったけれど、小さい子どもがいる睦樹と弥生、親の介護がある秋美は一次会で帰ることになった。
「じゃあ子持ち組はここで帰ります」
弥生と睦樹が他のメンバーに手を振り、秋美も
「私も二次会行きたかったけど、母親の体調が悪くなったみたいで……。申し訳ないけどここで帰ります」
と名残惜しそうに別れを告げた。それ以外のメンバーでカラオケに行き、懐かしい歌から今流行している歌まで幅広く歌う。二次会は深夜0時まで続いたけれど、終電が近い人からどんどん抜けていった。直幸は駅でタクシーを拾い、1人暮らしの家に帰宅する。