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032 最恐と最強

 魔神は、自分がいま何を言われたか理解することができなかった。

 強靭な肉体、膨大な魔力、そしてそれらを自在に操る知能。

 それら全てを持ち合わせる自分に対し、目の前にいる人間は何と言った?


『(私が、弱い――だと?)』


 理解できない。

 ありえない。

 こんなことが起こりえていいはずがない。


 相手のプライドをへし折り、粉々に圧倒するのは自分だったはず。

 だが、これは何だ?

 なぜ自分が蹂躙される側に立たされている?


『――ふざけるなよ、下等生物の分際で!!』


 怒りが、魔神の中で生じていた恐怖や戸惑いをかき消した。

 なんとしても、この人間だけは自らの手で潰さなければならない。

 そう決意を固めたのだ。


 まず、肉体の再生を開始。

 失った四肢に灰の魔力を集め、瞬時に元通りの姿へと復元する。


「……再生か」


 そう呟くユーリを見て、魔神は小さく笑う。


『……驚いたか? この程度の傷、私にとっては些事でしかない。下等生物である自身との違いに憂うがいい』


 得意げに告げる魔神だったが、ユーリは首を左右に振る。


「いや、驚くもなにも……その程度ならあるあるだろ。通りすがりのスライムでも使えるぞ」


『ッ! 貴様……どれだけ私を愚弄すれば気が済む!』


「愚弄じゃなくて、ただの事実だ」


 ユーリの言葉を聞き、魔神の体がぷるぷると震える。


『……いいだろう、そこまで言うのなら私の本気を見せてやる。貴様の情報は今の攻防で得た。二度目はないと思え!』


「――――――」


 そう告げると同時に、加速する魔神。

 ただし今回は一直線に迫ってくるのではなく、ユーリの周囲をグルグルと回るように駆けていた。

 加速に次ぐ加速。

 そんな状況で、魔神はニヤリと微笑む。


『(先ほどは少々、気が逸りすぎた。今度は私の最大加速をお見舞いして――)』


「そこか」


『――は? くうっ!!!』


 その直後、当たり前のように追いついてきたユーリの刃が襲い掛かってくる。

 キィィィン! と、紙一重のタイミングで剣を翳すことによって直撃を防ぐことに成功した。

 結果として、その場で両者の足が止まる。


『まさか加速中の私に追いつくとは。さっきといい、速度だけはそれなりのものを持っているようだな――だが!』


 裂帛の気合と共に、魔神は腕と剣に灰色の魔力を纏い、そのまま力尽くで押し込んでくる。

 速度ならともかく、力勝負なら自信があるようだ。


「……ふむ」


 対して、魔神の狙いを看破したユーリは瞬時に思考を切り替える。

 別に力勝負で負けるとは思わないが、馬鹿正直に真正面から、相手の狙いに付き合ってやる筋合いなどない。


 ゆえにユーリは剣を片手持ちに変え、巧みな剣捌きで魔神の押し込みをすかす。

 そして、


「ふんっ!」


『なっ――ごほっっ!』


 空いた左手による渾身の殴打。

 拳は魔神の腹に深く突き刺さり、その体を吹き飛ばした。


 それだけではない。


「【千刃せんじんたわむれ】」


 続く千の刃が、隙だらけとなった魔神の体に迫っていく。


『くぅっ――魔力障壁!』


 魔神は咄嗟に全身を灰の魔力で覆い、防御に徹する。

 それが功を成した。

 【千刃の戯れ】は手数重視の技であり、ユーリが使う剣術の中では比較的一振り一振りの威力が弱い。

 それゆえ、魔神の強靭な魔力をもってすれば凌ぐことも可能だった。


 ただし、あくまで可能なのは凌ぐことだけ。

 威力の全てを殺しきれるわけもなく、魔力障壁を突破した斬撃を全身に浴びることとなった。


『(くそっ! なんだ、この斬撃の雨は! 一体いつまで続く!?)』


 さらに、この技はユーリが使用をやめるまでほぼ永遠に続く。

 このままだと防戦一方になることを理解した魔神は抗う手段を探し始めた。


 ただこの場から逃れようにも、斬撃の雨はどこまでもついてくる。

 であるならば、雨ごと突破するしか活路はない。


 そのための手段を、魔神は獲得した知識の中から見つけ出した。



『――【アストラル・ブライド】!』



 【アストラル・ブライド】。

 それはアリシアが巨人を討伐する際に使用した、剣に魔力を溜めて解き放つ最大火力の奥義。

 見よう見まねではあるが、魔神の持つ灰の魔力は練度の低さを上回るほどの力があったようで、見事に斬撃の雨を弾き飛ばすこと成功した。


 ただし、その代償として――


『……はあ、はあ』


 奥義発動時、一時的に魔力障壁を解除したことで、再び魔神の全身は切り傷で刻まれることとなった。

 斬撃は各部位の付け根にも及び、今に様々な場所が千切れ落ちてしまいそうなほどだ。


 だが、命と魔力さえ残っているなら――


「……やっぱり、まだ再生するんだな」


『……当然だ。それこそが私の本質なのだから』


 瞬く間のうちに、魔神は万全の状態へと戻っていく。

 それを見たユーリはわずかに眉をひそめるのみで、大して動揺する様子はない。


 魔神は一度チッと舌打ちした後、ユーリに語り掛ける。


『随分と冷静だな、まるで自分が負けるとは微塵も思っていないかのように』


「まあな」


『……相変わらず癇に障る存在だ。だが、これを見ても同じ態度が貫けるか?』


 そんな前置きの後、魔神は堂々と告げる。


『――――【千刃の戯れ】』


「うおっ」


 剣技の再現。

 魔神はユーリによる斬撃の雨を浴びたことで、その本質を直感的に理解。

 その結果、同様の技を再現できるようになっていた。


 とはいえ、その精度はユーリほどではない。

 ユーリは迫りくる全ての斬撃を弾きながら、視線を魔神へと向ける。


 ――そして、()()()()()()()()()()()


「悪かったな、さっきお前を弱いって言ったこと……少しだけ訂正させてもらう」


『クハハ、なんだ、ようやく我の神髄が理解できたか!?』


「ああ。お前は俺が知っている中で、最も恐ろしい存在によく似ている」


 どれだけの攻撃を浴びせようと、簡単には消滅しない生存力。

 そして、足掻くように反撃を試みる気概。

 ユーリはこれらの特徴に該当する最恐の存在を知っていた。

 思えば、敵の黒みがかった全身もそれを彷彿とさせる。


 だからこそ、ユーリは敬意とわずかな恐怖を持って、魔神に向けて告げた。




「お前の特徴――それはまさに、最恐の【G()】だ!」




 その叫びに対し、魔神は笑いながら答える。




『その通り――私こそが、最強の【God()】だ!』




 何言ってんだコイツ。

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◇カクヨム版


『世界最強の<剣神>は、自分を低級剣士だと思い込みながら無自覚に無双する』


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