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私の可愛い天使たち

作者: まおー

以前書いたものを修正しました。

学校が終わるチャイムは私にとって勝負開始の合図である。


~~~~~~キーンコーンカーンコーン~~~~~~


チャイムがなると同時にまだ話している先生を無視して席を立ち、教室を飛び出す。クラスメイトや先生はその奇行に最初は驚いたり呆然とした表情をしていたが、毎日のようにそれを見るとさすがに慣れたのだろう、視線を送られることもなくなった。人とぶつからないように廊下を駆け抜けると途中で「走ったら危ない」という声がしたが私は走り続ける。


(急がなければ、あの子たちを迎えに行かなければ、、、待っててね私の可愛い天使たち!!)


この時の気分はさながら友のために走る有名な某小説に出てくる主人公のようである。はやる気持ちをおさえながら校門を抜け、最短ルートで目的地を目指す。

走り慣れた道を突き進む。もうすぐで天使に会えると思うと笑みがこぼれてくる。はたから見れば少し気持ち悪く見えるだろうがそれでも気にすることはない。そして目的地の前に到着した私は息を整えるように深呼吸を繰り返し、意を決して保育園の中に入る。そう保育園の中に。


「あら~。沙里ちゃん今日も早いのね。」

「先生。お迎えに来ました。玲と凪はどこに、、、」

「二人ともいつもの部屋にいるわよ。」


それを聞くと一目散に部屋のドアを開ける。そこには、多くのちびっこたちが絵本を読んだりブロックで遊んだりしている。ドアを開けた私には目もくれず元気に遊ぶ子供たちの中から天使たちを探す。


「あ、しゃりちゃん!」

「しゃりちゃんだ!」


そう言って二人仲良く手をつないで、とことこと私の方に歩いてくる天使たちに私は悶絶する。毎度のことながら私の天使たちは可愛すぎる。突然、膝から崩れ落ちた私を心配する天使たちに気づいてすぐに手を広げて二人を抱きかかえる。

なんの特徴もない私が唯一自慢できること。それは、この可愛い双子の天使の姉であること。天使たちが産まれたのは私が中学1年生の時。当初は、家族が新しくできると言われても実感がわかず、思春期の真只中だったこともあり、反抗期に突入していた。

しかし、天使たちが生まれた日。寄り添う双子の赤ちゃんを見て、私の人差し指をぎゅっと握る姿から、この天使たちを守るために私は生まれたんだと感じた。この子たちのそばにいたいと強く願った。そしてその後の私の生活は激変した。天使たちのおしめを変え、ご飯を口に入れてあげたりと甲斐甲斐しく世話をし続けた。今では忙しい両親の代わりに保育園の送り迎えやご飯を作るなど、天使たちを慈しみ、溺愛している。その姿を見て最初は私が成長したと喜んでいた両親は段々と私の異常な天使たちへの愛情の注ぎように今ではドン引きしている。


「会いたかった~。お迎えに来たよ!二人に会えなくて寂しかった~。」

「れいもしゃりちゃんにあえなくてしゃみしかった!」

「なぎも!!」

「毎度のことながら数年ぶりに再会した兄妹みたいだな…。」

「あ、富先生。当然ですよ!こんな可愛い天使たちと数時間も会えないんですよ!見てください。2人して首をかしげてきょとんとしているこの姿。そして、お互いを離さないとずっと手をつないで、空いた手で私の服をつまんで無意識に上目遣い。あー、可愛い!!」

「そうだね。ほんとに沙里ちゃんは2人が大好きだね。僕ちょっと嫉妬しそうだよ。」


そう言って茶目っ気たっぷりに笑う富先生に顔が赤くなる。いかん、顔が良すぎる。富先生は、優しそうな印象を与えるたれ目で、透き通った鼻筋、整った顔立ちをしている。性格も穏やかで、常に笑顔を絶やさない。この保育園唯一の男性ということもあって園児だけでなく、保護者からも絶大な人気を得ている。天使たちの担任の先生でよく話をするが、兄がいればこんな感じだったのかとよく考える。


「からかわないでください!」

「ばれちゃったかー。ごめんねぇ。沙里ちゃんの照れた顔が可愛くってついつい…。」


天使たちとは違って意図的に作られた上目遣いで申し訳なさそうに謝る富先生に仕方ないなぁと思ってしまう。私はこの顔に弱いのだ。一番は天使たちが泣いてしまう顔だが、、、


「まあ、いいですけど、誰にでもやってたらそのうち勘違いされますよ!」

「大丈夫だよ!これからも沙里ちゃんにしかやらない予定だよ。」

「それならいいですけど、、、いや良くないのか?」


私が悩んでいる姿に天使たちも一緒に難しい顔をして悩んでくれる。その姿に愛おしさが沸き上がり、富先生の言葉は忘れて、もう一度抱きしめた。


「やっぱり手ごわいな~。」

「何か言いました?」

「なんでもないよ。あ、これ、連絡帳ね。今日も二人は元気に外で遊んでいたよ。中に今度のお遊戯会のチラシと保護者の出席票入ってるからあとで確認しといてね。」

「ありがとうございます。」


名残惜しみながらも天使たちを腕の中から解放させて、連絡帳を受け取る。


「あのね~。れいね、こびとしゃんするの!」

「なぎはね、ようしぇいしゃん!しゃりちゃんきてくれる?」

「もちろん行くに決まっているじゃない!」


そう伝えると天使たちは満面の笑みを浮かべる。私のスカートを両サイドからつかむ天使たちに顔をほころばせてお遊戯会では父親の高画質カメラを持参していくことを決意する。が、もちろん撮影に気を取られて天使たちが見れなくならないように撮影は父親に任せるつもりである。両親が来れないのであれば、邪魔にならないところにカメラを設置すればいい。その場合は事前に保育園側に了承を得る必要が、、、、


「おーい、沙里ちゃん。」


天使たちの笑顔に意識を失いかけていた私は富先生の一声で何とか意識を戻すことに成功した。と同時に想像以上に富先生の顔が近くなっていたことに驚き、顔を勢いよく背けた。富先生はたまに、距離感がバグっている。体調が悪かった私におでことおでこをくっつけて熱を量ることもあった。その時は、キスするくらい近い距離に動揺した私の体温をさらに上げる結果となった。その時は天使たちも心配してくれて、元気になったら抱き着いてくれて二度と風邪は引かないと決めたのである。天使たちにも風邪をひいて欲しくはない。そういえば、これから寒くなるから天使たちにもこもこの服を着せてやらねば、、、去年の服はサイズが合わないだろうから今度の日曜日に買いに行かなければ、、、


「ま~た、玲君と凪ちゃんのこと考えてるね、時間大丈夫なの?」

「っは!トリップしてました。玲、凪、暗くなる前に帰ろう。」


いつも暗くなる前に帰る私たちを知っている富先生が再び声をかけてくれて私はようやく窓の外から漏れる夕焼けに気が付いた。暗くなってからだと天使たちが危ない。いくら平和な日本と言えど、こんな可愛い天使たちを見ればさらいたくなるだろうし、そうなれば私も守り切れる自信がない。明るければ、リスクが減る。


「帰る支度できたひとー」

「「はーい。」」


保育園の玄関で靴を履いて、ぴしっと手を上げる姿にほっこりしながら。天使たちとしっかり手を握る。保育園の先生方に三人で挨拶してから出る。


「しゃりちゃん、きょうのばんごはんなにかな~」

「なぎ、はんばーぐがいい!!ちーずがいっぱいのってるやつ!!」

「今日はお父さんとお母さんの仕事が休みだから久しぶりにお母さんの唐揚げだよ~。」

「やった~。れい、おかあしゃんのかりゃあげだいしゅき!」

「なぎも!はやくかえりょ~。」


両サイドではしゃぐ天使たちに自然と笑顔になる。この天使たちが健やかに成長することが私の願いである。


見ていただいてありがとうございます。

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