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な、ながされないんだからねっ!

 リビングに座った私たち。


 パパ、ママが私の目の前に座っているのはわかる。


 んだけど……。


「なんであんたが私の隣に座ってるの!?」


 三人掛けのソファの、私の隣にピッタリ座って、それはもうお行儀よく紅茶を嗜んでいるイケメンゴリマッチョに叫ぶと、イケメンゴリマッチョは、それは綺麗なお顔でにっこりと微笑んだ。


「それは、私とテディ様が運命の恋人だからですよ。」


 ……きゅん。


「……は?」


 いや、きゅん、って何だ、ここで絆されるな!


 突然目の前で爆発したとろけるようなハニースマイルに、心の許容範囲いっぱいいっぱいになりそうになりそうなことに抵抗するように、力いっぱいイケメンゴリマッチョから顔を背けると、私の目の前に置かれているイチゴのショートケーキのど真ん中に、思いきりフォークを突き刺した。


 そうだ! きゅんってなんだ! 気持ち悪い!


 変質者相手にときめいた自分、超気持ち悪い!


 しかもパパとママまで、あらあらまぁまぁ、仲良しさんね~って微笑ましく見てるの、全然が意味わからない!


「あ、あの、テディ様。」


「なにっ!?」


 がつがつとケーキを口に入れると、何とか社製クマのぬいぐるみ、みたいな名前で呼ばれたため、つい振り返ってしまった。


 っていうか、体格だけなら貴方の方がクマぬいみたいだっての! どこもかしこもてゅるてゅるの無毛だけど!


 しゃーーーっ! と、ねこさんの様に威嚇してみるけれど、そんな私に彼は柔らかく微笑む。


「ふふ、ほっぺにケーキがついていますよ。 可愛らしい。」


 そのまま指ですくわれて、目の前でペロッとされた!


 しかも!


 上目づかいで!


 なにそれ、超エロ色っぽい! なにこのイケメン!


「4う257@2なうかtN)AC(あt9@、34j y:s,b:っ!!」


「え? テディ様?」


 恥ずかしさで顔面から火を噴いた気がして(本日二回目!)、あわててソファの端まで逃げた私を不思議そうに首をかしげてみているイケメンゴリマッチョ!


 ちょっとまって!


 信じられない!


「なにそんな恥ずかしいことさらっとしちゃってんの!? 何なの!? 羞恥心とかないの!?」


「羞恥……? あぁ。」


 いやぁぁっ!て真っ赤になってクッション抱きかかえて叫んだ私に、にっこり笑ったイケメンゴリマッチョ。


「そうやって恥ずかしがってくださるテディ様を見たら、そんなもの、なくなってしまいましたわ。」


 ふわって笑った……。


 なにそれ、天使の笑顔なの!?


 なにそれ怖いっ!


 なんなの、この砂糖のはちみつ漬けみたいな空気、激アマすぎて吐くわ、こんなの。


 そんな、羞恥で真っ白に燃え尽きそうな私に対して、にこにこしているパパとママ。


「もう、もう! パパとママも笑って見てないで助けてよ! このイケメンゴリマッチョ、私の事、白昼堂々誘拐したんだよ! 放課後に突然現れて急にだよ! 大切な娘にそんなことされたんだよ! のんびりケーキ食べずに何とかしてぇ!」


 パパとママに助けを求めると、目の前のママがにっこり笑った。


「まぁまぁ、誘拐なんて。 ほら、ちゃんとおうちに帰ってきているじゃない。 それもこんなに仲良しさんで。 ママ、嬉しいわぁ。」


「いやぁ、今世でも二人がこんなに仲睦まじくて、本当によかった……よかった! なぁ、王妃。」


「はい、陛下。 今まで頑張ったかいがありましたわね。」


「お父様、お母様、恥ずかしいですわ。」


 いや、話聞いてる? 娘、誘拐されそうだったって言ってるじゃない!


 あと、なぜそこでナチュラルにお前が照れてんのよ、このイケメンゴリマッチョっ!


 そもそも何、なんなの?! 三人の仲睦まじいその姿、私より家族らしくない!?


「いやいやいやいや、おかしいおかしいおかしい! 王妃、陛下って何それ!? いつもパパ、ママって呼びあってるじゃん!」


 立ち上がって三人に指さして叫ぶと、ただいま~と間延びした間抜けな2つの声と玄関が開いた音。


「ただいまぁって、うるっせぇよ、姉ちゃん! 外までねーちゃんの超でかい声が聞こえててすげー恥ずかしいんだけど。 めちゃくちゃギャラリー集まってやべーんだけど!?」


「ほんとほんと、お姉ちゃん、声デカすぎ。 ほんと超恥ずかしいんだけど。」


 そう言ってリビングに入ってきたのは、私の可愛い可愛い、双子の弟と妹!


 あぁ、天の助け!


「おかえりっ! ちーちゃん、はる君、ちょと聞いてよ! 助けてよ! パパとママが変だし、イケメンゴリマッチョには誘拐されるし、本当にもう! おかしいの! 変なの! 助けてぇ!」


 二人に向かって叫びながら、目の前のおかしな光景に対して助けを求める。


 が。


「「は? お姉ちゃん、何言ってるの? 馬鹿になったの? イケメンゴリマッチョって……」」


「……はっ! この声は……っ!?」


 ここで、妹と弟、それからイケメンゴリマッチョ3人が顔を見合わせて……固まったよ。


 何故?!


 と、思ったら、私を真ん中に、全員が一気に叫び出した。


「ダロワイヤ王! サマゼロア女王!! なぜ貴方達がここにいるのですかっ!?!」


「「げ! その顔はシャーロット姫! なんでお前がいるんだ!」のよ!」


 ……へ?


 イケメンゴリマッチョと弟妹の声がハモったところで、それまで嬉しそうににこにこしていたママが、静かに、しかしおもむろになにかのオーラを出しながら立ち上がると、可愛い弟妹の前に立った。


「おかえりなさい、2人とも。 貴方達はここで一体何をしているの? 外から帰ってきたら、まずうがい手洗いでしょう? ……お茶を用意しておきますから、早くなさいっ!」


「「はい! すぐに行ってきます!」」


 にっこり笑ったママがそう静かに言うと、双子はビシッと背筋を伸ばして返事をして洗面所に走っていった。


 後に残ったのは、怖いお顔のイケメンゴリマッチョと、微笑んでお茶を飲んでいるパパ、それから新たにいそいそとお茶の準備を始めたママ、それから話についていけないままの私で……。


 本日もう何度目かわからないおかしな空気に私はまた、ソファにへたり込んだ。

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