で、なんでこうなったんですか?
広い心で読んでいただけると本当に嬉しいです!
「あの! あの、そろそろ離してください! これ! 誘拐に監禁ですから! 警察を呼びますよっ!」
渡され、読み終わった絵本を放り投げ、なんとかここから逃げようと、ぽかぽかと相手の腕を両手で殴ってみるが、まったくびくともしないナイス巨体。
「うぇん! 離してください~!」
負けずにぽかぽか何度も叩くが、全くびくともしない太い腕……は、まさかのつるっつる!
脱毛!?
しかも私より色白でとってもきめ細かい綺麗な肌、うらやましい!
……いや、そこじゃない。
「そもそもあなたは誰なんですか!? なんで私、拉致られてるんですかっ! 離してっ! 助けてぇ!」
足が届きそうなので、車の黒塗りにされた窓ガラスを蹴って みる。
あれぇ?! なんで?! びくともしないよ!
推しても引いてもびくともしない私の腰に巻き付いた両腕は、噛みつけない距離だし、どうしたらいいの!?
「もうっ! いい加減にしてください!」
体をひねって私を背後から抱え、何なら私の脇腹に顔をうずけている巨体イケメンゴリマッチョを振り返って……気が付いた。
淡い金色の綺麗に整えられた短髪に、金色の長いまつ毛の奥の煌めく青緑色の瞳。
ふぁ! イケメン! ものすごくイケメン!
そして外国の方ですかー!?
そうですか! じゃあ日本語が通じなかったのかもしれない!
元々勉強が好きじゃないから、パパとママから勉強しろって言われても「日本人なんだから英語使わないじゃん!」って言ってた自分を心から叱り飛ばしたい!
中学校と高校の英語の教科書を思い浮かべていっぱい考える。
離して、人違いですってなんていえばいいの?!
「えっと、えっと、レッゴー、うぇろんぱーそん? ……かな?」
とたん、私に顔をうずめていたイケメンさんが顔を上げてくれて、にこっと笑いました。
通じたっ!?
喜んだ私にイケメンゴリマッチョさんの一言。
「大丈夫ですよ、わたくし、日本語通じますから。」
「……っ!」
私のバカー! 超恥ずかしいー!
そういえば逃げてるときも流暢な日本語でしたよねーっ!
頑張った英語すら恥ずかしく、文字通り顔面から火を噴くぐらい真っ赤にした私は、もういい! と体をひねりながら、彼の頭を左手で何とか叩いた。
「早くそう言ってください、っていうか、日本語通じてるんならわかるでしょう!? 離してくださいぃぃっ!」
「でも、そうしたらテディ様は逃げてしまわれるでしょう?」
頭叩かれているのにも関わらず、私を後ろからしっかり抱きかかえたまま、髪の毛を乱しただけでノーダメージっぽそうなゴリマッチョイケメンの彼は、ぎゅうぅっと眉を寄せてそう言った。
確かに言った!
言ったけれども。
「当たり前です! 誘拐ですよ!? 学校帰りに急に車に連れ込むなんて! 何目的ですか!」
そう叫んだ私に、彼は目を大きく見開くと頭を振った。
「誘拐なんてとんでもない! わたしはテディ様をずっと探していたんです! わたしたちは運命の相手なんです。」
「……はぁ!? 運命なんて信じてないし!」
いくらイケメンでも、頭おかしい発言に気持ち悪って叫んでみれば、大きな目に涙が滲んでいる……。
う、罪悪感……は、あるわけないでしょ!
「誘拐は犯罪ですよっ!」
確かにお顔はイケメンだけどたぶんこの人、めちゃくちゃやばい人です!
「そもそもまったくの人違いです! 私は貴方の言うテディ様なんかじゃないです!」
人違いだから離してください!と、どれだけ必死にアピールしても、全く通じないイケメンゴリマッチョ外国の方!
「もう、本当に人違いですから! 離してくださいぃぃ!」
両手と両足を動かして車のあちこち蹴ったり殴ったりする。
「テディ様! 怪我をしてしまいますのでやめてください。 貴女の家に送っていくだけですからっ!」
その言葉に、私は手足を振り回すのをやめてイケメンゴリマッチョさんを見た。
「おうち? 送っていく?」
「はい。 ですからおとなしくしてください、大丈夫、貴方に危害を加える事なんて、わたくし、絶対にしませんから。」
その綺麗な笑顔。
「絶対! 絶対ですよ! 違ったら本気で泣き叫びますからね!」
「はい、もちろんです。 安心してくださいね。」
おうちに帰れるなら、おうちでお母さんとお父さんに訴えれば警察を呼んでくれるはず! と、私は力を抜いた。
すると、するん! と、イケメンゴリマッチョさんのお膝と腕の中にすっぽりはまってしまったのは……今は気にしないことにしよう、うん!