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月の下で  作者: 梅木しぐれ
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 自分の家のインターホンを鳴らして、中にいる彼女に帰ってきたことを知らせる。

 「おかえりなさい、今日もおつかれさまでした!」の言葉とともに、中からガチャリと鍵が開く音がして、ひとりでにドアが開いた。

「ただいま、ドアを開けてくれてありがとう」

「どういたしまして。それで今日は、ご飯にする?それともご飯にする?」

「ご飯しか選択肢ないじゃん」

「今日は自信作だから、ぜひ食べてほしい」

「お、それは楽しみですな」

 俺は動きやすい服装に着替えて食卓についた。

 今日のご飯はオムライスとみそ汁らしい。

 彼女が言った通り、チキンライスを包んでいる卵は見ただけでわかるぐらいに美味しそうな半熟具合でツヤツヤだ。みそ汁もふんわりと美味しい匂いが漂っている。

 彼女はケッチャプを片手に持ち「それでは僭越ながら、私がオムライスに絵を描かせていただきます」と宣言をした。

 彼女は真剣な表情でオムライスに何かを描いていく。その姿に俺は胸が温かくなるのと同時に、やっぱりこのままではいけないと感じた。

「じゃん、描けました」

「どれどれ、」

 そこには……

「未確認生物ですか?」

 美味しそうだった半熟オムライスに、なんだか形容しがたいものが描かれていた。目が三つあるのか?頭には角が二本生えていて、触手みたいなのが顔から左右ともに三本生えている。

「ね・こ!」

「猫?!」

 これが??! いや猫と言われるとそう見えるな……

「もういいから、食べろ!!!」と怒りながらもスプーンは俺に丁寧に渡してくるあたり、そんなに怒ってはいないようだ。

 オムライスも、みそ汁も美味しくて手が止まらない。無言で食べ進める俺を、ニコニコと楽しそうに見つめる彼女に恥ずかしく感じ、心のどこかがそわそわとした。

「ごちそうさまでした!」

「お粗末様でした」

「今日の晩御飯も最高に美味しかった。卵も半熟で」と食器を洗っている彼女の横で、ご飯の感想を伝えるのが彼女と生活を始めて新しくできた日課だ。彼女が「もう風呂に入ってこい!」と恥ずかしがって怒り出すまで感謝と感想を伝えるのだが、いつも気持ちの半分ぐらいで彼女は恥ずかしがる。今日も半分ぐらいで恥ずかしがって怒り出したので俺は言われたとおりに風呂へと向かった。



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