4
「この度はご愁傷様です」なんて言い慣れない、言い慣れたくない言葉を吐き出す俺を、彼女のお父さんが「ありがとう、悠真くん」と自身のテーブルに手招いてくれた。彼女の身内は自分が思っていたよりも多くて気まずかったから素直にありがたい。
だけど、俺の隣にいる彼女が誰の目にも留まらないのを見て、俺はなんとも言えない気持ちになった。
「悠真くん、今日は来てくれてありがとう。きっと、真希も久しぶりに悠真くんに会えて喜んでいるよ」
「そうだといいんですけど」
「真希は、なんだかんだ悠真くんを気に入っていたからね」
当の本人は自分の父親の後ろで腕を×ってしているのだが??
「あの一応、母にも僕が到着したことを伝えたいんですけど」
「悠真くんのお母さんだけど、妻の体調がよくなくてね。僕はここを離れられないから、つていてもらっているんだ。奥の部屋にいるよ。そこに真希もいるからゆっくり話してくるといい」
「……はい」
彼女のお父さんが指をさした扉を開ければ、十二畳ぐらいの部屋で奥には彼女の母親と俺の母がいて、母は彼女の母親の手をただただ握りしめていた。その前には横たわる彼女がいて、頭の方には蠟燭と、山盛りのご飯に箸が刺さっていた。
「あ、悠真……」
「……母さん」
俺は横たわる彼女の前に座り、
「この度はご愁傷様です」と先ほどと同じように言葉を吐き出した。
彼女の母親は俺を一瞥してペコリと頭を下げた。その目は確かに赤かった。
とりあえず俺は横たわる彼女に「久しぶり」と声をかけてみた。横たわる彼女の顔には白い布が被せてありそこから返事がなかったが、俺の横にいる彼女から「久しぶりって」と呆れたような声が聞こえてきた。
目の前の動かない彼女、隣の動く彼女。目の前のしゃべらない彼女、隣のしゃべる彼女。俺の目の前には自身の娘の死を悲しむ彼女の母親。俺はあまりの気まずさに耐えられず「ちょっと、外出てくる」と母と彼女の両親に告げて外に出た。