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コバルトソフィア  作者: SHOW。
第二章
65/156

65 ウィザードオブルーム

 人工島民による学校での昼食はわりと奔放。前提として、普段の食事は男女どちらかの寮になるべくみんなが集結し、毎日手作りメニューと一緒に食卓を囲む。最近ではなかなか全員が集まる日は無くなってしまっているけど、この暗黙の鉄則は料理担当という役割と共に、人工島に住うみんなの日々に溶け込む。

 ただその反動なのか、もしくは日常サイクルのメリハリなのか、学校の食事時間では単独や少人数行動が目立ち、教室に残る生徒はいつもごく少数に留まる。

 大抵が別部屋に移動したりだとか、お気に入りの景観を一望出来るスポットだとか、気ままに練り歩いて直感で決定した場所だとか、みんなそれぞれの価値観で行動する。

 もちろん奔放とはいっても午後授業があるから、あくまで学校が主軸となった範疇でのそれだ。なので校門の外へと出ることは稀となる。


「……こんな埃っぽいところで食べるの嫌なんだけど?」

「わがまま言うなよなー。ここに居る以外の誰にも聴かれたくない話なんだろー? じゃあ俺たち的にはこの部屋以外あり得ねぇ」


 口元を押さえて、煙たがるように墨花が苦言を呈する。

 塔矢が嗜めているが、残念ながら不機嫌なままだ。


 そこは三階。物置き部屋と化したうちの一室。

 以前に千尋、理人、塔矢が発現能力の対策のための相談場所にしていた部屋だ。別室よりはマシだけど、定期的な清掃を怠りがちなのには変わりなくて、数年に渡る文化祭や体育祭などの道具一式が独特の異臭を放っていて、確かに墨花が言う通り食事をするには合わないなと千尋は苦笑する。


「おおっ! これ文化祭でやった演劇の小道具じゃん! いやー懐かしいわー、おいこれ何年前のやつだっけ!?」

「墨花さんと苑士郎くんで随分と反応が違うね……」

「うん。どちらも気持ちはなんとなく分かるけどね」


 発案者である墨花を筆頭に、一応場所だけ案を出した千尋、適当に了承した苑士郎、内容的に場所は合ってるんじゃないと理人、どこでもいいだろうと塔矢、こうして五人が集まる。

 この五人の共通点は発現能力の実在を知っていること。

 もともとの相談場所を、そっくりそのまま流用した形だ。

 他にも真希やメドウ……女寮組にもまだ知る人物は居るけど、生憎学校に登校していないから不参加だ。


「ははっ、これ演劇で使ってた魔法使いのローブじゃねぇか! こんなにボロボロで薄っぺらい材質だったっけか!? もっと丈夫に作られてた気がしたんだがな」

「それって確か、色的にメドウさんが着てたのだよね。いつもはこういう行事に全く参加しないのに、このときだけは珍しく乗り気だったから覚えてるよ」

「あーそうだそうだっ。水仙が主人公の少女で、カカシが苑士郎、ブリキが治、ライオンがジオか。そんで味方の魔法使いが鈴音、敵の魔法使いがメドウ……みんなハマり役だったよなー。つかここにいるヤツら、苑士郎以外何やってたんだ? 俺自身も覚えてねー」


 苑士郎が更に小道具を漁っていくと、ローブの他にも薄汚れた包帯、プラスチックフォームに銀紙を貼り付けただけの鉄メッキ擬き、ダンボールに描かれた草木、未使用の風船など、千尋たちの記憶を呼び起こす品々が発掘される。


 主人公役の水仙が苑士郎、治、ジオが演じるキャラクターを仲間にするシーン。鈴音が水仙に助言をするシーン、苑士郎、治、ジオが共闘して傀儡を倒すシーン、水仙とメドウが直接対峙する佳境のシーンなど、千尋は断片的にだがフラッシュバックして来る。


 当時の演目は幼少期時の学習にと、政府管制課から提供された児童文学から選ばれた。勉強が日常に染み付いていなくて、代わりに読書が趣味でもあった墨花の進言も理由の一つだ。

 その当時とは、今から八年前。

 みんなが学校生活を始めたばかりの七歳の頃。

 まだソフィアが居て、人工島に二十七人居たときの話。

 そして現在までに全員参加した最後の催事でもある。


「ボクと塔矢君は魔法使いによって召喚されたやられ役だよ。千尋君と墨花さんはファンタジー世界に飛ばされる前の町人。兼任もあったけど、概ねそんな感じ」

「あー……思い出して来た。俺、斧でぐっさり斬られた気がするわ……全然痛くなかったな」

「偽物だからね。ちなみにボクは舞台外に飛ばされたよ」

「そうそう。俺が演じた心を取り戻しつつあるカカシの手によってな——」

「——思い出に花を咲かせるのはいいけど、そろそろ私があなたたちを呼んだ理由を話してもいいっ?」


 墨花が鋭利なまなじりと共に、皆の回顧を制する。

 元々集まった目的と、ついでに食事まで失念していると言いたげに。


「……そういや、お前に呼ばれたんだったな?」

「そうよ。なに忘れてるのよ」

「たはは……わりぃ。んで、俺たちに話ってなんだ? 手頃な男を集めたかったってわけじゃないんだろ?」

「はぁ? 当たり前でしょ……本当は真希とメドウも呼びたかったけど、二人とも先生が来訪するなら来ないって聞かなくてね……おかげで男女比が最悪よ」

「あ……そうだね」


 墨花はやれやれと溜め息を吐く。

 真希とメドウがいないことを嘆いているみたいだ。

 食事を持ち寄り集まった五人は自然と、点と点で繋げば五角形が形成出来そうな配置に収まる。

 千尋はこれから墨花が言いたい内容に、なんとなくだが察しがつく。

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