表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コバルトソフィア  作者: SHOW。
第一章
45/156

45 前者後者

 とにかく知らなかった……当事者にとっては最悪な出来事以外の何物でもなくて、本当にどうしようもない。でもだからといって、人工島に隔離しても良い理由になるはずはない。これでは罪人への執行で強いた島流しのようだ。そんな運命を呪わずに済む人生は、人工島民の胸の内を加味すれば絶対に有り得ない。

 物心付いた頃には生活圏が限定されていて、家族との連絡や、輸入港に届けられる貨物から、外界が存在することが明確に示唆されている。本土とも称され、みんなが誕生した本当の故郷のことだ。そこに渡航する権利すらない現状を、おめおめと受け入れるはずがないだろう。真希の主張は人工島民みんなの核心に迫っている。


「……その真希さんの意見には、ボクも少し同意かな」

「理人……」

「うん、あくまで考え方だけならね。多分だけどボクだけじゃなくて千尋君たちも……そうだね、真希のことを全否定する人はこの島にはいないと思う。この人工島から出てみたい、外の世界をもっと見てみたい、もっと自由な暮らし欲しい……みんな考えたことぐらい、あるはずだから——」


 相変わらず透明化したままではあるが、理人は首肯する。

 当然真希にはその姿を捉えられないから、頷くというモーションに意味なんて何もないんだけれど、意思表明と連動して身体も動いてしまう。


 ちなみに理人の返答は、別に千尋から真希へと寝返ったわけじゃない。どちらが白でどちらが黒ではなく、あくまで両者の納得いく論点を公平に審議したに過ぎない。つまり尊重出来る内容だけ汲み取っただけになる。余談だが寝返っていないことへの証明としては、未だに【無色透明化】を彼自身に、そして塔矢への付与を絶っていない。


「——でも真希が実行しようとしている政府管制課への報復行為には、今のところボクは賛同出来ないよ」

「……どうして? 理人だってこの島から出てみたいんでしょ? 解放されたいでしょ? だったらなんで拒否する必要があるのさ? 能力は絶対にあたしたちのアドバンテージになるはずなのに——」


 千尋と理人と塔矢、そして真希との相違点は極端に集約してしまえば一つだけ。発現能力を過信しているか、どのようなリスクがあるのかと慎重なくらい。前者が真希で、後者が千尋たちだ。


「——……これは千尋君からの受け売りも含まれているんだけど、この短期間にボク、塔矢君、真希さんの三人が立て続けに能力に目醒めている」

「そうみたいね、三人ともが明らかに科学的な理論からかけ離れた能力を使えているしね」

「うん。でもその時期がこんなにも重なるのが偶然……と片付けるには都合が良過ぎるとボクは思うんだよね」

「……つまり、何が言いたいの?」


 敢えて訊ね返したけれど、理人の言い分は真希にもなんとなく理解出来ている。ただそれを知らぬ存ぜぬのうちに政府管制課を叩きたい思惑もあって引き延ばそうと試みる。何故ならこれから理人の述べる予測は、政府管制課への報復が成功する確率が跳ね上がる反面、人工島民のみんなを死地に赴かせるのと同義の提案。だからこそ真希は少数精鋭の発現能力者だけを募って、政府管制課の本元に乗り込もうと焦り気味に主張していた。もしもの犠牲者を最小限にとどめて終わるために。


「これからこの人工島に住まうみんな、【HMGG細胞】と【TOUNO】が混ざった誤投与の被害者全員がボクたちみたいに能力が顕現する確率が高い。この十五年何事もなかったのに、確認しただけでも数日間に、急に三人が目醒めるのにはなんらかの法則性があると考えている。例えば十五年前後で覚醒する仕組みだったり、第二次性徴期のホルモンバランスや身体の変化だったり、投与量に応じた時限式かもしれない。どれにしても、見当違いだったとしてもだよ、新たに発現するかもしれないリスクを他でもないボクと塔矢君、そして真希さんが証明していると思うんだ——」


 既に三人の発現能力者が短期間に現れた事実。

 ここで食い止まるとするのは、楽観視だと理人は言う。

 そして真希の思考には重大な欠陥が抜け落ちている。


 この発現能力の条件による一番厄介で最悪なケースとしては、蓋然性はほぼほぼ皆無に等しいが、人から他人へとウイルス感染のように負の連鎖を生む場合。つまり誤投与を摂取していない人物にまでも伝染するかもしれないリスク。だから真希がいくら発現能力を利用して政府管制課に突入したところで、人工島民からすれば健常者を巻き込むのは誰の本意でもない。帰るべき場所を本当に失う。


 もちろんこの例えは空論に近い。誤投与された人工島民だけと考えるのが自然ではある。だけど完全に排除出来るだけの根拠がない。みんな発現能力のことを理解していないからだ。


「——そして残念ながらその理屈を、ボクらはまだ分かっていない。解明されていない不確定要素の能力を行使して、政府管制課に反抗するのは早計だと思っている」

「……そう」

「だからボクは真希さんの報復行為には賛同しないし、出来れば留まって……いや、今は様子を見て欲しい」

「……っ」

「能力に早く目醒めたボクたちだからこそ分かり合えることを、この人工島から出るよりも優先したい」


 すると真希のちょうど正面に理人と塔矢が姿を表す。

 千尋を裏切ったわけじゃなく、塔矢が仕方ないと溜息を吐いていることから、合意の上で信憑性を確かなものにするために、二人ともども透明化を解く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ