表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コバルトソフィア  作者: SHOW。
第一章
42/156

42 斜光と斜塔

 平行線上に対峙した交錯は終局へと向かう。

 千尋、墨花、苑士郎、理人という外野の四人も固唾を飲んで塔矢と真希のデュエルの行く末を見守るしかない。

 体力はどちらも余力を残した状態だが、能力を長々と発動し続けたせいで集中力の欠如が著しくなる。照射するにも維持するにも精緻なバランスを要求されるからだ。ましてや、まだまだ不慣れによる練度の低さがそれを助長させる。


「大丈夫?」

「なんのことだよ?」

「その塔が壊されたら……って、焦りがあるんじゃない?」

「それは真希にも言えるだろ。一度光線を防ぎ切った場合、威力と引き換えたのに、更なる追撃が可能とは、俺には到底思えないが?」

「……元より、そんなつもりないからね——」


 塔矢の言い分は正直なところ、彼自身の心情を悟られないためのブラフでしかない。けれど言い得て妙というか、真希の実情を的確に捉えてもいる。三原色を織り交ぜた白色光線の弱点は、元々敷いていたその他の効力が減少したり、新たに別の色素を用いた能力がしばらく使えなくなることだ。要するに諸刃の剣といえる。


「——うん、ならもうさっさと終わらせよう」

「同感だ」


 双方とも早期決着を望む。いや例え二人が望まなくとも、そうなる運命だっただろう。継続して発現能力を使用する限界地点を初めて肌で感じ、霞む視界が休息を欲する。

 これは何事にも応用が効くことだけど、こまめに休憩を挟まないと能率は低下する一方になる。このままだとやがて本来の実力を発揮出来なくなってしまうと身体が訴える。


「角度を若干変えた方が良いね」

「なっ!? くそ……変なところで冷静だな、お前」

「勝率を上げないとだから」

「……そりゃあ、俺もだなっ」


 真希は射線の角度を強引に突き上げる。

 ミサイルを遠方に放つときと同様の傾斜だ。

 平面の第三塔に対してなら正面突破するよりも、斜光させて塔矢の特定維持箇所を分散させることで、物理法則にも関係して遥かにダメージを与え急所を生み出す。事実すぐに第三塔には僅かな亀裂が現れる。


 どうにかして対処を施したいところの塔矢だが、今更第三塔の造型を変更するにはただならぬ労力と神経が摩耗し、最悪自己破綻にまでなりかねないからと、反抗に移したい感情に蓋を掛け現状維持に努めるしかない。背後には理人が居て、理解者である千尋の内幕がある。真希の一撃に無理やり適応するためだけに、最大安定の創作防御壁を失うわけにはいかない。


 塔矢は作戦を更新せず【創作幻自塔】を保ち続ける。

 例えここで、敗北を喫することになったとしても。


「塔矢……終わり、だよ」

「バカかっ。まだ、わかんねぇだろうがぁっっっ!」


 最後の一手まで気を緩めまいと、毅然とした赴きで感情論を押し殺しながら告げる真希。

 白色の光線の角度を変え、すぐさま生じた第三塔の裂け目など目もくれず悪足掻きをするしかない塔矢。

 二人の対決の優勢は最初から、言わずもがな真希の方だ。


 持てる力量を全霊で賭けて照射した真希。

 安定して発動し易い建築物を増加させただけの塔矢。

 その覚悟の違いが勝敗に直結するとは断言出来ないが、生半可でかつ安全圏で済まそうとした塔矢と、死に物狂いで単騎攻勢に出るしか道筋がなかった真希との温度差が如実に反映された格好だ。


 もちろんどちらとも愚策を打ったわけじゃない。

 塔矢が無謀にも発現能力を使用しなかったのは、最低限後ろの理人を護る義務があったから。そして千尋や墨花に苑士郎への二次被害の懸念が抑制となり、また枷ともなっていたからだ。

 一方で真希はというと、この自由室内での攻撃を防ぐ脅威となりえるのは塔矢一人のみだったため、彼の発現能力を打ち砕きさえすれば真希自身の【皓々三原色】の絶対的優位を千尋を含め全員に伝播し、心を入れ替えるのではないかという算段があった。

 つまりは他の能力がしばらく行使不可能になる等価交換としてここで全力を出し尽くし、政府管制課からの規制を無くすための同志を募る最高のアピール場所と解釈した上で塔矢を打倒しに行っている。


「……ここで降参するなら止めるけど、どうする?」

「聞かれる、までも……ねぇよ」

「そんなボロボロの塔で抗っても、何にもならないじゃん」

「その、ボロボロの塔を、真希は未だ壊せてないんだろ? もしかして燃料切れか? だから、そんなことを俺に提案して、来てるんじゃねぇだろうな。はっ、なら尚更受けらんねぇわ」

「そう……最後の情けをふいにするか……まあ塔矢ならそう答えてくるとは思っていたけど……残念だよ」


 白色の光線がまた僅かに角度を上空へとかちあげる。

 流石に威力は落ちてはいるけど、まだまだ健在だ。

 地割れた第三塔の急所の隙間へ確実に突き刺さるように。


 ちなみに真希が途中で射線の角度を変えた理由は塔矢の発現能力維持箇所の分散ともう一つあって、それは白色の光線が塔矢ないし理人へと余剰で直撃させてしまうリスクを回避したかったから。いくら敵対したといっても、彼女だってれっきとした人工島民。みんなへの温情くらいある。


 亀裂が刺激され第三塔の整形が傾いていく。

 イタリアにある有名な斜塔よりも曲がり、雪崩れていないのが不可思議なレベルでひび割れる、あられもない姿。

 ここで真希はようやく白色の光線を意図的に緩める。

 既に目標である塔矢の打倒は果たしたも同然だからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ