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コバルトソフィア  作者: SHOW。
第一章
38/156

38 用心棒の加勢

 現状を言うなれば、交戦の証明である壊された塔と割られたガラスの破片が、真希の発現能力のせいで翠色を塗りたくった木目の真上に散乱する。もはや昔の話とはいえ、体育館の代わりを担っていた一室は、平気で室内を駆け回ることすら困難な状態に様変わりしてしまっている。

 そのせいもあり、双方の破片を生み出した元凶の真希と塔矢は立ち止まったまま膠着し続ける。眼光をちらつかせる真希の方は、発現能力である【皓々三原色】があまり近接戦闘に向かないのと、足場が制限されているために迂闊な行動が出来ずじまい。

 対して塔矢の方は理人の恩恵もあり真希の能力のテリトリー外に居るが、どのようにして攻撃を繰り出してくるかと機会を窺っているせいだ。性質的に塔矢の発現能力は受動的で、意味合いはそのまま受け身でこそ効力を発揮する。だから真希がなんらかのアクションを起こさないとなかなか事態は展開しない。つまり両者ともが守勢に入っている。


「おいおい、どうした? さっきまで理人を狙っていた威勢の良さはどこにいっちまったんだよ、真希っ」

「……塔矢、アンタいつからここに居たのよ? というか今日は管理担当でしょ? さっさと帰るかデータを転送しに行くものじゃないの? まさか職務放棄?」


 矢継ぎ早に疑問をぶつける。

 これは塔矢を困惑させることや、一転攻勢に向かない発現能力に気付かせない狙いもあった。加えてさきほど意表を突かれた挙句に不覚にも驚愕しまった真希自身の苛立ちの発散先になる。要するに八つ当たりの与太話だ。


「あー……それなんだがなー——」


 どの質問から返そうかと塔矢は右斜め上を見る。

 いやどちらかと言うと、どう全ての疑問に返事しつつ話を繋げたら良いだろうかと思案し試みている。

 さっきからひたすら緊迫が交差する視線を、もういい加減に外したかったせいのもあるが、考えをまとめてることに集中する。余計なプレッシャーは時として仇となる。


「——いつから居たってのは、理人と落ち合って千尋が危ねえってのを聴いたあとだから、割と直近だな。そんでなんで俺がまだ学校に居残っているかというと……放課後に千尋と理人の三人で集合する予定があったんだよ」

「……嫌な予定ね」

「まあそう言うな。んで、千尋のノートにそういう趣旨が箇所書きされていて、一人寂しく別部屋で待っていたってだけだ……あっ、言っとくけど管理担当の役割をサボったわけじゃないからな? 後回しにしたんだ、後回し……本当だぜ?」


 塔矢が語ったことは、戯けたつつも適度に合っている。

 荷物置きとなった三階の一室に千尋と理人が訪れていたけど、本来ならここに塔矢も合流する予定だった。

 ただ塔矢は教室で雁行との会話が弾んでしまい遅れ、いざ三階へと向かったときにトイレなどにも用事があると別経路を辿る。それが結果的に最短ルートで教室に出戻った千尋と入れ違いを起こして逢えず、しばらくその三階荷物置きにて待ちぼうけて窓外を眺め続けていた。千尋も教室でそのことに薄々勘付いて引き返そうとしたところで墨花と苑士郎に呼び止められてしまう。


「ふーん」

「いやふーんってよ……もうちょっとなんか反応してくれても良くね? つーかそっちから質問したんだろー? 話を振るならちゃんとまとめてくれねぇとさー、ただの無茶振りになるわー」

「なんか思ったよりもどうでもいい答えが返ってきたから困ってるのよ……察しなさい」

「察せるわけねぇだろ。なんだどうでもいいってよ……あとシンプルに酷ぇ理屈じゃねぇか。俺に喋らせるだけ喋らせておいてよー」

「うん、まあもう少し最悪なのが過ぎってたからさ——」


 翠色の一部地面が消えて、破片が顕著になる。

 真希はリラックスするように肩を落として呟く。

 それは安堵もあるが、微かに失望も見え隠れする。


「——……正直、千尋の提案を断ったあたしが力ずくで諦めさせようとするのを悟ったから……とか思ってた。理人と塔矢はその用心棒的な意味合いで居た、みたいな?」

「ほーそいつはとんだ策士だな……居ればの話になるが」

「話を聴く限り、普通にたまたまだったみたいね」

「ああ。ただ千尋から真希がどこかしらで暴走するかもしれないって情報は共有してたぜ。ここまで派手とは予想してなかったがな」


 そう言って塔矢はやれやれと苦笑する。

 対して真希は唇を結んだまま気を緩めない。


「宣戦布告するときは堂々と狼煙を上げないとね」

「へー……そう言う考えは個人的に好みだ。まるでRPGの途中でパーティーに加わる主要キャラクターにいそうな思考回路と行動力だ……というか、いい加減この状況をなんとかした方がよくね?」

「どういう能力か測り兼ねて警戒してんのよ、アンタを」

「はっ、警戒だって? そりゃあ、俺が怖いって言ってるのと変わんねぇ気がするんだが?」

「……そのセリフ、後悔しないといいんどけどね?」


 真希は塔矢へと手を差し伸ばす。

 相変わらずの不機嫌さをまとったままに。

 無論手を繋ぐためでも、掛け声と共に助けようとしているわけでもない。

 これは正式に塔矢をターゲットと見据え、千尋や理人よりも優先して倒す必要があるという算段を出す。そうして無数と表現すれば大袈裟だが、真希の背後には赤青緑の三色の光線がトライアングルを組み上げて発動機会を窺う。

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