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コバルトソフィア  作者: SHOW。
第一章
17/156

17 無難な衣服と俯き加減

 予定通りに早朝から千尋と墨花は寮先で合流し、紛失した男女両方の寮の鍵を捜索するために学校へと向かう。日差しはないが夜更けと比較すると微かに明瞭な曇り空の最中、地面に落ちている確率が高いので、二人ともが俯き気味にどこにあるかと視線で追う。ただ歩きながらそれを行なっているためか、気落ちしているせいか、あまり会話が弾まない。


 今日はちょうど休日ということで、お互いに各々の私服のまま辿る。学校のないときにわざわざ制服を着用する子はなかなかいない。

 その衣服はというと、千尋は白色のカットソーにロングパンツ、そして使い慣らしたホワイトスニーカーと白を基調にしたファッションスタイル。一方で墨花は黒シャツにグレーのパーカーを羽織り、七部丈でカーキ色のスキニーパンツにシルバースニーカーという全体的に明るさ控えめのスタイルだ。どちらにも共通して言えることはオシャレさよりも機能性を重視している点だろう。なんせ鍵の捜索が今回のメインで、いつまで掛かるかも分からないのなら、疲労溜まりにくく、汚れても問題ない装いにするのが無難だ。


「うーんやっぱり登下校中に無くした訳がないと思うんだよね。特に登校の時点で落としていたなら、それこそ後から登校してきた千尋や苑士郎たちが気付いてもいいはずだし、途中の業間であるかどうかの確認もしたんだけどね……」

「そのときはあったの?」

「うん。私のバッグの中に、ちゃんと」

「……だよね」


 そのまま千尋と墨花は並列したまま校門を通り抜ける。

 人工島の学校は常に開かれているため、すんなりと校庭から本校舎に移動して二階の教室へ行く。ここを拠点に二人で手分けしようという算段だ。

 まずは墨花の座席がある、黒板の配置から考えて真ん中列の前から二番目の席の周辺を見る。心の中で謝りつつ他の子の机の中も調べさせて貰うが、相変わらず発見に至りそうな気配すら微塵もない。そして改めて千尋は確認のための質問を投げ掛ける。


「墨花の推測なら学校にあるってことだよね?」

「そうなるんだけど……昨日もいっぱい捜して、どこにもなくてさ。そもそもこの島で紛失することってあんまりないからねぇ……」

「ここまで見つからなかったのは僕のときくらいかな?」

「うん……あっいや、今のは私の言い方が悪かった。昔の千尋を責めてるんじゃないよ?」

「ん? ああ、ごめん僕も自虐のつもりじゃなかったよ。あくまで事実を言っただけというか……」


 この人工島は単純に人口が少なく面積も狭い。

 だから第三者が故意じゃないにせよ触れてしまい行方が掴めなくなったり、ましてや盗まれたりする確率も低く、捜索範囲も限定されるため、こうして物を失くすこと自体がとても珍しい部類となる。


 ちなみに五年前に千尋が鍵をなくしたときは、憔悴した千尋の行動経路が全く分からなくて、聴き出せる雰囲気でもなくて、でも千尋だけに責任を押し付けるのも嫌で、こうなったらと他のみんなで島中の大捜索を敢行した。結果的に校舎を囲う花壇の花々に紛れており、ポケットかバッグの収納スペースから零れ落ちたのか、それとも別の理由があったのかは定かにならないままだったけど、一応は解決した。


 つまり今回の場合は責任能力が著しく欠如していたような不手際じゃなくて、あるはずのモノが忽然となくなってしまい、墨花もどうしてこうなったのかと戸惑う。睡眠や食事を挟んで冷静にはなってもなお、腑に落ちない。


「あのさ千尋」

「……なに?」

「ちょっと話変わるかもだけどさ……千尋はもしかして、私を含めみんなのことを疑っていたりしない?」


 急に何を言っているんだろうと、千尋は向き直る。

 そこに希薄な流し目をして、真意を知ろうとする墨花が捜索を一旦停止にし、千尋の推察を暗に訊く。


「みんなの? な、なんでそうな——」

「—— これはあくまで私の妄言のように受け取って貰って構わないんだけど……他の子がイタズラであれなんであれ、誰かが盗んだケースって考えられないかな? ここまでないのは、変というだけで片付けられなくて、意図したものなんじゃないかなって」

「……意図?」

「そう。流石に理由までは私の推測が及ばないからちゃんとは難しいけど、誰かしらが鍵を手にすることで利点がある子が私視点かなり怪しく思ちゃうかな?」


 墨花は廊下側の座席テーブルの中を覗き見た。

 千尋は最後に自身の席のテーブルの中が空だと分かる。

 どちらも大して成果に繋がるようなモノはなかった。

 そして教室内には高確率で無いことを示唆する。


「僕の意見としては仮に寮の鍵を盗んだとする、でもそれってあんまり意味を成してないよね……って感じ? あくまで形だけのモノだと島の子なら知ってるし。外部からの来訪者もいない。となると施錠してようがしてまいがあまり相違がなくなってしまう。それなのに島民の誰かが信頼を揺るがすようなことを企てるとはあんまり思ないかな?」

「んー確かに……それは何の意味があるの、とか質問されたら、答えられない」

「……そんな目に見える意地悪からすぐに名乗り出てもいいくらいだし、そうしてくる理由も全然ない……なんなんだろうね」

「うーん……」


 仄暗い教室に千尋と墨花。

 時計の長針が進んでいるらしい。

 もうじき、明々とした黎明が窓越しに訪れる。

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