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世紀末とボク?  作者: さくら
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four

 救いを求めるような視線を、一郎は夏月へと向けた。その視線を案内するかのように、夏月は後ろを振り返る。

「私ですが?」

 不機嫌そうな表情と声音で答えが返ってくる。何かを考え込むような表情をした後、一郎は手に持っている箱を差し出した。

「あ、あの……これを……」

 秋月は、差し出された箱を訝しげな表情で見る。

「なんですか?」

「え、あ、その、手にとってみてください」

 それを見て、夏月は必死に首を横に振る。

「夏月?」

「あ、あのね。僕、それ壊しちゃったみたいで……」

 気まずそうにそう言う夏月を横目に、秋月は箱の中を改めて見る。特にどこか壊れている様子はない。

「さっき、それにおでこをぶつけちゃって、そしたらぴかーって光って……」

 相変わらず要領を得ない話し方だと思い、秋月は軽くため息を吐く。

「すみません。弟がああ言うので、確認をさせて貰ってもいいですか?」

 すぐに一郎は笑顔になり、どうぞとばかりに箱を差し出した。秋月は慎重に手を伸ばし、箱の中の物に触れた。そのままそっと手に取り、確認をする。見た目は特に破損している部分は無かった。起動を確認しようと、スイッチはどれか尋ね用地して一郎を見た。だが、目の前で力なく崩れ落ちている様子に、言葉を失った。

「センパーイ! しっかりするっす」

「誰が先輩だ!」

 声のした方へ振り返りながら、一郎が怒りをぶつけるように言い放つ。ジョンは特に気にした様子もなく一郎を指さした。

「違うだろ! 後、人を指さすな! それに、その変な日本語は止めろって言ってるだろ!」

「えー、今の日本の若者は、みんなこんな日本語っすよ。それにーこの話し方、女の子に受けるんっすよ」

 訳の分からない言い合いを始めた二人を気にもせず、秋月は一郎の手から箱を取り手に持っていた機械を入れた。それを、二人の前に差し出す。

「お帰りください」

 表情と声音は静かだが妙に迫力のある様子に、一郎とジョンの言い争いがピタリと止まる。

「お帰りください」

 そう繰り返す秋月に、二人は我に返る。すぐに一郎は、首から提げた身分証を提示した。

「すみません。大切な話があります。国家の命運を左右する重大な話です」

 必死にそう話す一郎の身分証明書を見、秋月はさわやかな笑顔を作った。それを見て、一郎の表情は和らぐ。

「イタズラに付き合っている暇はありません。どうぞお引き取りを」

 笑みを絶やさず、秋月は手にした箱を一郎に押しつけた。



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