seventeen
少し頬を染めてアリーチェは顔を背けた。
「と、とりあえずここじゃなんだから入って」
アリーチェは少し横に反れ、夏月と秋月を部屋に招き入れた。
「おじゃまします!」
夏月が嬉しそうに部屋へと入る。
「お邪魔します」
その後を、秋月が続いた。アリーチェの部屋は、一人用になっており、二人の部屋よりも狭かった。
「アリーチェちゃんは、一人なの?」
「そうよ」
促され、二人は小さなテーブルの椅子に腰掛ける。
「紅茶でいい?」
「うん!」
「はい」
アリーチェの問いに、二人は了承の返事をした。返事を待つまでもなく、すでにアリーチェはティーポットに茶葉を入れていた。
「それで、どうしたの?」
アリーチェの問いに、夏月は小さくて可愛い袋を差し出した。
「なに?」
可愛い小さな袋を見つめながら、疑問を口にした。
「前に、アリーチェちゃん消しゴムくれたから……」
その言葉に、アリーチェは驚きの表情を浮かべた。
「だからこれ……」
差し出された小さな可愛い紙袋を受け取る。
「ありがとう。見てもいい?」
「もちろん!」
了承の返事を聞き、紙袋を開けた。
「可愛い!」
ピンク色の可愛らしい花の形をした消しゴムを手にし、アリーチェは目を輝かせた。嬉しそうに消しゴムを見つめる。
「日本って、可愛い物がたくさんあって、いいところね」
年頃の女の子らしく、可愛い物に心を躍らせる。
「良かった……。気に入ってくれて……」
安堵の表情を浮かべる夏月を、アリーチェが見つめた。
「ありがとう。すっごく気に入ったわ」
礼を述べ、アリーチェは夏月の頬に軽くキスをした。一瞬、何をされたのかが分からなく少しの間固まって居たが、状況を理解し夏月の頬が赤くなる。
「夏月、紅茶が入ったわよ」
「う、うん……」
赤く染まった顔を隠すように、手のひらで口元を覆った。簡単には頬の赤みは消えず、夏月は下を向いた。その様子を見つめながら、秋月はティーカップに口を付ける。
実は、アリーチェへのお土産だけ夏月は悩んでいた。花か菓子か決めかねていたら、一郎が雑貨屋へ案内をした。少女が好きそうな可愛いものがたくさん揃っており、返って選ぶのに悩むのではないかというほどであった。そこで、一郎は友人から消しゴムを貰ったとスキー付きから聞いたことを話す。それを聞き、半分にして貰った消しゴムのことを思い出したのだ。
夏月は、まるで盗み見るようにアリーチェを見た。可愛い消しゴムを、嬉しそうに見ている。その様子に、夏月は一郎に感謝をした。