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世紀末とボク?  作者: さくら
47/134

fifteen

 秋月が無表情に語りかけた。悔しそうな視線を、一郎は楽しそうに話している二人へと向けた。その様子を、秋月は観察するように見つめた。国家公務員ではあるが、年齢的にもまだ二年ほどと言ったところだろう。特になにかの権力があるわけではない。おそらく、家は普通の一般家庭と思われる。ジョンと比べると、これと言って優れたところがあるわけではない。ただ、日本という国は捨てがたい。

 秋月は、一郎とジョンを見比べた。個人で判断をするのなら、比べるまでもなくジョンである。だが、日本とアメリカで比べた場合、これは非常に悩むことになる。とりあえずは、このまま契約を伸ばし様子を見るのが一番だと結論を出した。

「しづきちゃん?」

 突然、名を呼ばれて声のした方を見た。そこには、心配そうな顔をして覗き込んでいる弟の顔があった。

「大丈夫?」

 不安そうな表情に、笑みを返した。

「少し考え事をしていただけ」

「それなら良かった」

 嬉しそうな表情で答える。男という生き物はどうでも良いが、弟だけは可愛かった。肉親だからというのもあるかもしれないが、秋月に取っては、別のカテゴリーに存在する生き物だったのだ。

 秋月は一郎を見た。スイーツに釣られている夏月は、ジョンをとても気に入っているようだが、日本との関係もしっかりとしたものにしておきたいと考える。

「えーと……岡田さん?」

「鈴木です」

 無駄だと分かっていても、一応、一郎は自分の名字を教える。

「そうですか。それで話があるのですが、よろしいでしょうか?」

 爽やかな笑みを浮かべ、誘いをかけた。


 学校へ帰ってくると、急ぎ夏月は食堂へと向かう。

「みえちゃん!」

 食堂にたどり着くとすぐに調理室へ向かい、目的の人物を呼んだ。すぐに、調理室から一人の女性が顔を出す。

「あらあら夏月ちゃん。もう帰ってきたのかい?」

「うん」

 夏月は、目の前の肝っ玉母さんのような相手に花束を差し出した。

「これ、いつもオヤツをくれるからお礼」

 ピンクを基調とした豪華な花束を差し出す。

「あらあらまぁまぁ」

 驚きの表情を浮かべて花束を受け取った。

「こんな立派な花束を貰ったのは初めてだよ。ありがとうね」

 嬉しそうな様子を見て、夏月はホッとした表情を浮かべた。

「すみません。いつも妹がお世話になっております」

 丁寧に頭を下げる。

「稘 秋月と申します。妹が迷惑をおかけしたりしてませんでしょうか?」

「あ、あの……比嘉美枝です……」

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