ten
「Is it an order?」
「No, not that」
秋月は極上の笑みをジョンへと向けた。
「But, not a bad deal, right?」
秋月の言葉に、ジョンは考える。ここで、自国との契約を交換条件に出せば、即座に日本と契約すると言うだろう。これは、断ることが出来ない取引なのだ。命令と変わらない。そう思いながらジョンは秋月の顔を見つめた。極上の笑みを浮かべた綺麗な顔がとても魅力的に映る。
「ぽち?」
夏月がジョンを呼んだ。
「なんすか?」
「Pretty please!」
可愛く上目遣いでねだるように頼む。ジョンは、天井を仰ぎ見て考え込んだ。姉は計算尽くだ。そして、弟の方は天然だ。これはとても良いコンビで、どう考えても勝てる気がしなかった。
「Certainly」
ジョンはそう答え、二人に優雅な笑みを返した。それを確認した秋月は安堵の表情を浮かべる。一郎の話を聞いてしまった以上、断るのは非常に困難だった。ジョンの方にもなにか理由があれば別だったが、そういう事情は無かった。そのため、取引を持ちかけた。
「I appreciate it」
秋月が礼を述べた。何とか無事に取引は成功したが、英語での会話になったとたん、いつもとは違うジョンに少し戸惑った。綺麗な発音で丁寧な言葉遣い。金髪碧眼に美しい顔立ちも手伝って、とても優雅でやりにくいと感じた。
ジョンはスマホを取りだし、どこかへ連絡を取り始める。いくつか指示を出した後、通話を終えた。一郎は一人、蚊帳の外という感じでどう対応してよいのか分からずにいる。
「センパイ」
「は、はい!」
突然、呼びかけられて一郎は驚きビクリと身体が反応した。
「病院と医師の手配をしたっす」
ジョンの言葉の意味が分からず、一郎は首を傾げた。
「とりあえず後から連絡いくんで、よろしくっす!」
「ど、どういうことだ?」
状況が分からず、一郎は戸惑う。
「先輩の妹さんの手術の手配をしたっす」
その言葉に、先ほど金は自分が払うと言ったジョンの言葉を思い出した。二人の会話が分からなかったが、もしかすると交渉が成立してしまったのではないかと慌てる。
「わ、私は了承していない!」
ジョンは少し考え込む。
「あーあの話っすね。あれとは別っす」
「別……?」
訳が分からないという顔をして、尋ねた。
「そっす。センパイとは正々堂々と勝負したいっすからね」




