seven
不思議そうに、夏月は秋月の顔を見つめた。秋月も夏月の顔を見る。どう考えても、この弟が立派な成人になり社会人としてきちんと仕事をして嫁を貰う未来が想像できない。これはもう、金持ちに渡してしまった方が幸せになれるのではないかと考える。ジョンが住んでいる言ったジョージタウンは、メイフラワー号まで遡れるような由緒正しい金持ちが代々住んでいるところだ。何不自由ない生活を送ることが出来るだろう。
「ちょっと待った! それなら、私と結婚してください!」
突然、一郎が割り込んできた。
「先輩、日本は同性婚は無理っすよ」
「事実婚なら平気だ」
真剣な表情の一郎に向かい、秋月はため息を吐いた。
「二人とも、そこまですることなんですか?」
「もちろんです!」
一郎が、当然というように答えた。
「俺は、かのじょたちが気に入ったからっすよ。二人まとめてどうっすか?」
ジョンの申し出に秋月は爽やかな笑顔を返してスルーした。
「とりあえず、今の状況では何もお答えできません」
秋月が、二人を制するようにそう言った。
「とりあえず、今度こそ詳細をお願いします」
「分かりました」
一郎は落ち着きを取り戻し、夏月と秋月を見た、夏月は一郎の視線に構うことなく、ドルチェを食べ続けていた。
「もう、担当される神様は確認されたということで、間違いはないでしょうか?」
「えぇ、しかしこれは……」
秋月が少し考え込む。夏月は、美味しそうにドルチェを食べている。秋月は自分のモバイルPCを机の上に置いた。画面には、夏月が担当する神の名前が記されている。
「これが本当なら、私たちはアメリカの所属ということになるのでは?」
「そうっすよね!」
秋月の言葉に、ジョンが嬉しそうに食いついた。
「本来ならそうだったのかもしれませんが、お二人は二重国籍でしたので、その場合はご本人にどちらの所属になるか決めていただいています。何人か、同じように二重国籍の乙女もおります」
「そうっす! 国同士で熾烈な争いが行われてるっす!」
「そうですか……。それでは、それについては、私たちが決めることでよろしいですね」
「もちろんです」
「分かりました」
三人が話を進めて行く中、夏月は変わらずドルチェを食べている。
「あと、本当にこの神様は存在するのですか? これが存在するとなると、神様だらけになるのでは?」