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世紀末とボク?  作者: さくら
35/134

three

 なぜなのか、ハードカバーのものが多く、一郎とジョンは両手にいくつも紙袋を持っていた。本の重みが手にかかり、二人は時折、本が入った紙袋を床の上に置く。

「それにしても、まだ買うんすかね?」

「あの様子だと、そうだろうな……」

 二人は秋月を見ながら、揃ってため息を吐いた。

「そういや、そろそろ昼っすけど、昼飯はどうするんすか?」

 ジョンがそう口にしたとたん、夏月が振り返った。

「ごはん?」

 今までおとなしく姉の後をついて回っていて、少し存在を忘れかけていた二人の視線が動いた。

「そうっす」

「なに? なにを食べに行くの?」

 期待に満ちた視線を向けられ、ジョンは一郎を見る。

「何を食いに行くっすか?」

「とりあえず、個室を予約している」

「料亭っすか? 芸者っすね!」

 嬉しそうにジョンが答えた。

「若い女性が、そんなところを喜ぶわけないだろ!」

「え? 先輩が選ぶところよりは間違いは無いと思うっすけど?」

 若い女性の好むところなど、全く分からない一郎が、不敵な笑みを浮かべた。

「今回は、女性職員にアンケートを採ったので、間違いはない」

 以前、秋月と夏月の制服を作るために採寸をしに行ったとき、一郎はなんの迷いもなく大衆的なハンバーガーショップへ入っていった。若い者が好きだ。それだけで店を決めていた。

「それで、何を食べに行くの?」

 更に期待を膨らませた夏月が一郎を見上げた。

「イタリア料理です。女性にもの凄く人気のお店だそうです」

「先輩にしては、まともなところを選んだっすね」

 ジョンの言葉に、一郎は満足げな表情を浮かべる。

「山本さん、ぽち」

 呼ばれて、二人は秋月の方へと向かった。

「これ、お願いします」

 両腕に抱えた本を二人に差し出し、極上の笑みを浮かべる。

「よろこんで!」

 二人は揃って答えると、手にしている紙袋を置き、本を抱えてレジへと走っていった。

「夏月は? なにか必要なものはないの?」

 秋月に問われ、夏月は考える。だが、何も思いつかず首を傾げて更に考えた。

「えーっとね……」

 夏月は更に考える。考えている間に、一郎とジョンが紙袋を手にして戻って来た。

「どうしたんですか?」

 夏月の様子を不審に思い、一郎が尋ねる。

「あっ!」

 突然、夏月が小さく叫び、ぽんっと手のひらを拳で叩いた。

「僕、花子ちゃんにお土産買いたい。あと、アリーチェちゃんでしょ、それからノンノちゃん。それで、みえちゃんにも!」

「誰?」

 最後の名前に、秋月が思わず疑問を口にした。

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