eleven
なぜ、今さらこんなことを聞くのかと一瞬悩むが、なにかを思い出したような顔をした。「あ、僕、ここでは女の子だった」
何が問題なのか、全く理解してない様子に、秋月は軽くため息を吐く。
「一応、男なんだから、女子と一緒のベッドで寝て、もしバレたら……」
この弟に限ってなにかの間違いというのは無いだろうが、性別を偽っていることがバレる可能性は高い。
「そうだった……ごめんなさい……」
昨夜、三人でプリンを食べて楽しんでいた。三人とも、お腹がいっぱいになり眠気を覚えてしまい、そのまま夏月のベッドで寝てしまったのだ。もちろん、女子同士ということで、アリーチェとノンノは何の警戒もしていなかった。
少し落ち込み顔を伏せる夏月の頭を、秋月は軽く撫でた。
「これからは気を付けるように」
「うん……」
「じゃあ、二人を待たせているから戻ろう」
洗面所を出て、ベッドへと向かう。まだ、少し眠そうな顔をしてアリーチェはベッドに座っていた。ノンノは、一度起きたはずだが、再びベッドに横になり気持ちよさそうに寝ている。
「すみません。お騒がせしました」
秋月が爽やかな笑顔を作りアリーチェに話しかけた。
「い、いえ……こちらこそ、お邪魔しました」
そう言い、アリーチェはすくっと立ち上がると急いでドアへと向かう。
「あ、アリーチェちゃん!?」
それを見た夏月は慌てて追いかける。
「もうすぐ朝食だから、準備しないと……」
「あ、そうだった」
夏月の言葉に頷き、アリーチェはドアノブに手をかけると急いで部屋から出て行った。それを見送った夏月は、ベッドへと戻る。そして、気持ちよさそうに寝ているノンノを見下ろした。
「ノンノちゃん、朝だよ」
夏月は寝ているノンノに呼びかける。
「あと……五分……」
「もうすぐ朝ご飯だよ」
「ご飯……食べる……」
むくりと起き上がり、ノンノは眠そうに目を擦った。
「ノンノさん、大丈夫ですか? 早く着替えないと間に合わなくなります」
秋月に言われ、ノンノは時計を見る。すぐにベッドから起き上がり、廊下へと続くドアへと向かう。
「ありがとう……。プリン美味しかった……」
「うん、また一緒に食べようね」
その言葉にぺこりと頭を下げ、ノンノは部屋から出ていった。ノンノを見送ると、秋月は深くため息を吐く。
「しづきちゃん……ごめんね……」
少し上目遣いで夏月は秋月の表情を伺う。
「とりあえず、私が居ないときに誰かをここに入れるのは禁止」
「うん……」