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確かに、生徒数はとても少ないとは言え、一人でまかなえる人数と広さではない。おそらく、それらのスタッフの管理などをしているのだろう。少し話をしながら歩いていると、秋月の部屋の前にたどり着く。
「あ、そういえば、中庭の窓を開けっ放しでした」
「承知いたしました。そちら、確認いたします」
即座に返ってきた言葉に、共にいられる時間はここで終わりなのだと理解した。
「ありがとうございます。お願いします」
秋月はゆっくりとドアノブに手をかける。
「それでは、おやすみなさい」
「おやすみなさいませ」
丁寧に頭を下げた花子に名残惜しそうな視線を向け、一呼吸置いて秋月は部屋の中へと入っていった。
目覚ましの音で秋月は目を覚ます。すぐ横のベッドに目をやり、夏月を起こそうとして奇妙なことに気が付いた。なぜか、布団がかなり盛り上がっている。
「夏月?」
布団に手をかけ、一気に捲り上げた。そこには、パジャマ姿の夏月、アリーチェ、ノンノが互いに寄り添いながら寝ている姿があった。予想もしなかった状況に、秋月はしばしその場で固まる。
「か……夏月?」
秋月の声で、夏月がうっすらと目を開けた。
「しづきちゃん……? おはようございます」
眠そうに目を擦りながら朝の挨拶を口にする。
「あ、あぁ……おはよう」
少し戸惑い気味に秋月は挨拶を返す。二人のやり取りのせいか、アリーチェとノンノも目を覚ました。二人は、キョロキョロ周囲を見回す。
「おはよう、アリーチェちゃん、ノンノちゃん」
二人へ朝の挨拶をすると、夏月は大きくあくびをした。
「おはようございます」
「おはよう……」
二人も、挨拶を口にする。
「夏月? これはいったい……」
昨夜、戻って来たときにはすでに夏月はベッドの中だった。そのため、シャワーを浴びて少し休んだ後、就寝をした。部屋の電気は消えており、夏月のベッドをそこまで気にもしていなかったので、何も気が付くことはなかったのだ。
「あのね。昨日、プリンがいっぱいあるから、アリーチェちゃんとノンノちゃんと三人でプリンパーティしたの」
「あぁ、そう……」
そう答えると、まだ眠そうな夏月の手を取り、ベッドから引きずり下ろす。
「しづきちゃん?」
衝撃で完全に目が覚めたはよいが、状況が理解できずに引きずられるように洗面所へと連れて行かれた。
「どうしたの?」
洗面所に引きずり込まれた夏月が不思議そうに尋ねる。
「夏月……性別は?」
「え? 僕? 男だよ」