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世紀末とボク?  作者: さくら
18/134

five

 夏月は、軽くため息を吐いて困ったように天井を見上げた。

「アリーチェちゃんは、ぱそこん得意?」

「いえ……」

 トーンダウンし、悲しそうな表情をしてアリーチェが答える。

「そうなんだ。僕と一緒だね」

 沈んでいるアリーチェとは反対に、夏月は嬉しそうに笑った。他愛もない話をしていると、授業の開始を知らせる鐘が鳴った。教師が入ってくると号令がかけられ、起立、礼、着席と一連の動作が行われる。授業や生活に関しては、日本の学校を基本としているようだった。

 授業中、夏月は何度もあくびをする。今日のことが楽しみすぎて、夕べは興奮し、あまり眠ることが出来なかったのだ。眠い目を擦りながら、なんとか授業を耐え抜く。授業の終わりを知らせる鐘が鳴り、教師が教室を出て行くと夏月は机に突っ伏した。

「ずいぶんと眠そうだったわね」

 アリーチェは横目で夏月を見ながら話しかけた。

「うん……。夕べ、あんまり眠れなかったんだけど……」

 その先の言葉を濁し飲み込んだ様子に、アリーチェは納得したように頷いた。

「さっきの授業、もの凄く眠くなるものね……」

「うんうん……」

 机に突っ伏したまま、今にも寝てしまいそうな様子で夏月が答えた。その後の授業も眠さと戦いながらなんとかクリアし、昼休みになったとたん夏月の目と意識が覚める。

「アリーチェちゃん! ご飯だよ!」

 勢いよく立ち上がり、夏月はアリーチェに期待に満ちた目を向けた。

「お昼は、朝と同じ食堂だから」

 少し気圧されたように答える。それを聞いた夏月は、勢いよく手を差し出した。

「早く行こう!」

 少し戸惑いながら、アリーチェはその手を取った。


「ごっはん! ごっはん!」

 嬉しそうに歌いながら、夏月は朝と同じ席に着いた。食堂にはすでに生徒が到着しており、おのおの好きに過ごしている。

「アリーチェちゃん、ここね」

 夏月は自分の隣の席をぽんぽんと叩く。少し夏月を見つめた後、アリーチェは指定された席に着いた。

「言われなくても、ここが私の席よ」

「あ、そうだったんだ。僕、知らなくて……」

「別に、今日が初めてなんだから知らなくて当然よ」

「うん、ありがとう」

 屈託無く笑う夏月から、アリーチェは視線を反らした。

「夏月」

 聞き慣れた声が、すぐ横から聞こえてきた。

「しづきちゃん!」

 すぐに声のした方を向き、嬉しそうに相手の名を呼ぶ。

「どうだった?」

 一人になった弟を心配し、様子を尋ねる。

「あのね、アリーチェちゃんに消しゴム貰った!」

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